糖尿病でも住宅ローンは組める?団信審査と対策・ワイド団信・フラット35

糖尿病・予備軍は日本に約2,000万人!

まず知っておきたいのは、糖尿病の人は住宅ローンの審査(正確には団信の審査)に落ちる可能性があるということです。実際に糖尿病を理由に審査に落ちた人は多くいますが、一方で糖尿病の治療中でも団信に加入し、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人もたくさんいます。
この記事では、糖尿病と住宅ローンの悩みを持つ方の参考になる情報をお届けします。治療は始めていなくても、健康診断や人間ドックで血糖値が高く「境界型糖尿病」「糖尿病予備軍」と言われ、団信の審査や告知をどうすればよいか不安に感じている方にも役立つ内容です。
まずは、日本人にとって糖尿病がどのような病気なのかを確認しておきましょう。
目次
平成28年「国民健康・栄養調査」にみる糖尿病患者・予備軍
厚生労働省の平成28年「国民健康・栄養調査」では、「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)」は約1,000万人と推計されています。そのうち治療を受けている人の割合は76.6%なので、約760万人が糖尿病の治療をしていることになります。
さらに、「糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備軍)」も約1,000万人とされ、両者を合わせると約2,000万人にのぼります。糖尿病はまさに日本人の国民病の一つと言えます。
まず念頭に置いてほしいのは、これだけ多くの患者がいるなかで、金融機関(保険会社)が糖尿病というだけで無条件に住宅ローンを断ることはない、ということです。
(参考)厚生労働省の調査結果の概要(クリックして拡大表示)
これだけの糖尿病・予備軍がいれば、当然、住宅ローンを検討している人もたくさんいます。住宅ローンを諦める必要はありませんが、悩みの種になりやすいのが審査(正確には団信の加入審査)です。
通常の住宅ローンでは「団信」への加入が必須です(後述のとおり、団信への加入が必須でない住宅ローンもあります)。次に、団信の加入審査基準を説明します。
団体信用生命保険(団信)の加入審査と告知
団信は、死亡時などに住宅ローンの残高が0円になる生命保険で、一般的な住宅ローンでは加入が必須です。
団信に加入するには、治療中の病気や過去の病歴を告知したうえで加入審査を受ける必要があります。糖尿病に限らず、おおむね過去3年間の病歴を正確に告知しなければなりません。
糖尿病は患者が非常に多いため、告知書では具体的な記入項目が指定されています。合併症の有無、HbA1cの値、インスリン治療の有無、投与している薬剤名、空腹時血糖値など、詳細な告知が求められます。以下は、フラット35で使われている機構団信の告知書(住宅金融支援機構の団信告知書)です(糖尿病に関する告知は右下あたりの<糖尿病の場合、必ずご記入ください。>の箇所です。どのような情報を告知するのかの参考にしてください)。
糖尿病だと審査に落ちる?
冒頭のとおり、糖尿病だからといって必ず落ちるわけではありません。一言でいえば「症状による」です。糖尿病でも必ずしも審査に落ちるわけではないので、借り入れ・借り換えを簡単に諦めないようにしましょう。
ただし、どの程度の症状で落ちるのかという明確な審査基準は公開されていません。投薬治療をしていても通常の団信に通った人もいます。一方で、「インスリン治療」や「合併症」がある場合は、団信の審査に通る可能性が低くなることは覚悟しておいたほうがよいでしょう。とはいえ、それでも住宅ローンを100%諦める必要はありません。
そもそも、団信への加入が必須でない(しかも団信なしなら金利が0.2%低くなる)フラット35があるため、どうしても団信に加入できない場合でも、フラット35であればかなりの確率で借り入れ・借り換えが可能です。ただし団信なしは万一の備えがなくなるため、その点のリスクには注意が必要です。
なお、糖尿病で通常の団信に加入できた人には、きちんと対策をとっているという共通点があります。最初に相談すべきは、銀行でも保険会社でもなく、かかりつけの病院・医師です。
住宅ローンを借り入れたい・借り換えたいという事情を主治医に相談し、「投薬治療で症状が落ち着いている」といった診断書を書いてもらって加入審査時に添付するなど、下準備を進めておきましょう。経験豊富な医師なら、過去に住宅ローンを組んだ患者の状況についてアドバイスをくれることもあります。
銀行・保険会社は決められたルールで審査していますが、100%機械的に処理しているわけではありません。診断書の自主的な添付と、正確な告知・真摯な対応は、団信に加入できる可能性を高めるという点を覚えておきましょう。
<参考:告知義務違反について>
団信の加入審査で、糖尿病の「告知を偽ること」自体は、告知書に書かなければよいだけなので簡単にできてしまいます。住宅ローンの残高が極端に大きくなければ、告知しないまま団信に加入して契約できる可能性もあります。しかし、これは絶対に避けるべきです。
保険会社の審査は、「加入時の審査」よりも「保険金の支払時の事実関係の調査」のほうが厳密に行われます。保険金を請求する際には、「保険金請求書」と同時に、保険会社が病院に内容を確認してよいという「同意書」を提出します。保険会社はその同意書に基づいて病院に経緯や治療状況を詳細に確認するため、告知義務違反は容易に判明します。
告知義務違反があると、いざという時に保険金が支払われず、残された家族が路頭に迷いかねません。
なお、「告知義務違反は2年で時効になる」「死亡原因と告知義務違反の関連性が認められなければ保険金は支払われる」といったルールがありますが、これは「きちんと告知しているのに保険会社が重箱の隅をつついて保険金を払わない」という不払い問題を牽制するために定められたものです。
「2年時効」という情報だけが独り歩きし、「2年間バレなければよい」という人がいますが、それは大きな誤解です。2年経過後の保険事故でも、調査で告知内容が悪質と判断されれば契約自体がなかったことにされる可能性があり、その対応に追われるのは残された家族です。
境界型糖尿病・糖尿病予備軍は告知が必要?
正常値の範囲より血糖値が高くなってきた状態を「境界型糖尿病」や「糖尿病予備軍」と言います。健康診断や人間ドックで気づくことができますが、これは「糖尿病」ではなく予備軍です。正式に糖尿病と診断されたわけではないため、告知は不要です(ただし、告知書の各質問項目に該当する治療・指摘がある場合は正確に記入してください)。
引用:糖尿病情報センター
糖尿病の種類は団信の加入審査に影響する?
糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病、その他の糖尿病、妊娠糖尿病の4つの種類があり、最も患者が多いのが2型糖尿病です。これらの種類そのものは団信の審査結果とは基本的に関係がなく、糖尿病の種類というより、あくまで症状の重さ・治療状態・合併症の有無などで審査されると考えておきましょう。

引用:糖尿病サポートネット
糖尿病の方のための住宅ローン審査対策
糖尿病治療中の方が住宅ローンを利用するための対策を整理します。選択肢は次の5つです。
- 通常の団信に加入できるように努力する
- 引受条件緩和型団信(ワイド団信)を利用する
- 団信に加入しなくてもよい住宅ローン(フラット35)を検討する
- 告知せずに(告知義務違反をして)申し込む ※非推奨
- 住宅ローン(団信)の申し込みをしばらく待つ
王道は「②のワイド団信を利用する」です。それぞれ確認していきましょう。
① 通常の団信に加入できるように努力する
前述のとおり、かかりつけの医師に事情を説明し、症状や治療状態が良好であることが記載された診断書を書いてもらって保険会社に提出し、加入審査の参考資料として扱ってもらいましょう。もちろん医師は嘘を書けないので、強引な依頼は禁物です。軽度で治療が順調・安定していれば、きちんとした診断書を添えることで通常の団信に加入できる可能性が高まります。
症状が軽い・安定している(投薬治療が順調な)人は、この準備をしたうえで、できるだけ低金利な住宅ローンに申し込むのがおすすめです。低金利の代表格はネット銀行で、なかでもauじぶん銀行、楽天銀行、ソニー銀行の住宅ローンが人気です。診断書の提出は求められていなくても、自主的に添付すると参考資料として扱ってもらえます。心配な場合は、申込書類の送付後に各金融機関のコールセンターへ電話して添付の旨を補足しておくとよいでしょう。
② 引受条件緩和型団信(ワイド団信)を利用する
糖尿病の症状がある程度進行している場合や、通常の団信で落ちてしまった場合は、ワイド団信の利用を念頭に住宅ローンへ申し込みましょう。症状が進んでいる人やきつめの投薬治療を受けている人にとって、これが最も現実的な選択肢です。
ワイド団信は一般団信より加入しやすい一方、高度障害・死亡時の保障内容は一般団信と同じです。加入する場合、住宅ローン金利に年0.2〜0.3%程度が上乗せされ、取り扱いのない住宅ローンもあるので事前に確認しましょう。
<ワイド団信を取り扱う金融機関例>
| 金融機関 | 上乗せ金利 | 引受保険会社 |
| auじぶん銀行の住宅ローン | 年0.3% | ライフネット生命 |
| ソニー銀行 | 年0.2% | クレディ・アグリコル生命保険 |
| PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行) | 年0.3% | クレディ・アグリコル生命保険 |
| SBIマネープラザ(住宅ローン/対面) | 年0.3% | SBI生命 |
※上乗せ金利・引受保険会社・取り扱いの有無は変更されることがあります。最新の内容は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
③ 団信への加入が任意であるフラット35を利用する
フラット35は、通常の銀行の住宅ローンと違い、団信に加入しなくても借り入れ・借り換えができます。糖尿病の方にとって有力な選択肢です。ただし団信は万一の際の家族の生活の備えになるため、当サイトでは最初からこの選択肢を選ぶことはあまりおすすめしません。とはいえ、有力な選択肢の一つであることは間違いありません。
フラット35は、どの金融機関で申し込んでも団信加入・非加入の条件は変わらないため、低金利・低事務手数料の金融機関を経由して申し込むのがおすすめです。なお、フラット35は団信に加入しない場合、加入時よりも金利が0.2%低く借りられます。
SBIアルヒのフラット35(フラット35最大手の住宅ローン専門金融機関)※SBIアルヒのスーパーフラットであれば、ワイド団信を付帯させることも可能です。
④ 糖尿病を告知せずに(告知義務違反を覚悟して)申し込む ※非推奨
これはおすすめできる方法ではありませんが、最初から「保険金を受け取ることを期待しない」のであれば、糖尿病を告知せずに団信の加入審査を通す、という方法も一応存在します。原則として保険会社は加入時に厳密な調査を行わないため、審査に通ることだけを優先すればできてしまうかもしれません。
しかし、これは最初から団信に加入していないつもりで住宅ローンを利用することと同じです。万一のとき保険金がおりないことを家族と共有しておく必要があり、事後の対応をするのも家族です。団信以外に十分な備えや蓄えがないと、残された家族が大変な思いをしかねません。あくまで一つの整理として紹介しますが、家族としっかり話し合い、慎重に判断してください。
⑤ 住宅ローン(団信)の申し込みをしばらく待つ
糖尿病は完治しにくく、悪化しないようコントロールしていくことが重要な病気です。仮にワイド団信にも加入できなかった場合は、病気をコントロールする実績を積むことが大切になります。1型(多くは先天的な要因)は改善が難しいとされますが、2型(生活習慣が関わるもの)であれば、早期発見と規則正しい生活・適度な運動・適切な食事・投薬治療などで症状が改善する可能性が十分に残されています。
現在の症状や治療状態では審査に落ちることが確実と考えられる場合は、まず治療に専念し、症状が改善して(主治医が良好な診断書を書ける程度になって)から、住宅ローン(団信)の借り入れ・借り換えを申し込むという方法があります。マイホームの購入や借り換えが先延ばしになるのは残念ですが、「団信」「ワイド団信」に加入できるようになることは健康状態が良くなった証でもあり、治療の目標にもなります。
どうかマイホームを諦めないでください。
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