失業すると住宅ローン控除はどうなる?還付と確定申告・借り換えの注意点

この記事では、失業して収入がなくなったときに住宅ローン控除(住宅ローン減税)がどうなるのか、還付への影響と手続きを整理します。あわせて、返済を続けている方が気になる「借り換えても住宅ローン控除は続けられるのか」という論点も、国税庁の取り扱いにもとづいて解説します。
この記事にたどり着いた人の中には、失業中に住宅ローンを借りる方法を探している人もいるかもしれません。しかし、収入がなくなることが確定している状態で住宅ローンを新規契約するのは難しく、借り入れ後の生活や返済にも困ります。まずは収入源を確保し、そのうえで住宅ローンを検討することをおすすめします。
なお、住宅ローン控除は「本来納めるべき税金が少なくなる・還付される」減税制度です。仕組みは「お金がもらえる」ではなく「払うべき税金が減る」なので、実際に得られる経済効果は、住宅ローンの残高だけでなく年収(=納税額)にも左右されます。
目次
住宅ローン控除とは?納めた税金が上限になる
住宅ローン控除とは、納めた「所得税」(控除しきれない分は翌年度の「住民税」)から、住宅ローンの年末残高に応じた一定額が差し引かれる制度です。控除額は年末残高等×0.7%で計算します(100円未満切り捨て)。
ポイントは、そもそも税金を納めていない人には戻ってこないという点です。一定程度の納税がないと恩恵を受けられない制度だと押さえておきましょう。

収入があるうちは住宅ローン控除に意味があるのはわかりやすいと思いますので、ここからは失業して収入がなくなった場合に控除がどう扱われるかを確認していきます。
失業していても住宅ローン控除は受けられるのか?
たとえば、ある年に失業して、その年の年末時点でも失業している状態だとすると、その年の所得は0円のため所得税の納税額も0円になります。
仮に住宅ローンの年末残高が4,000万円で、計算上は28万円(=4,000万円×0.7%)の控除枠がある状態でも、納めた税金が0円なら、この28万円を現金で受け取れるわけではありません。このケースでは恩恵はゼロになってしまいます。
※実際には住宅の区分・入居年ごとに借入限度額が定められており、年末残高の全額がそのまま対象になるとは限りません。ここでは仕組みを理解するための単純化した例として記載しています。
一方、年の途中で失業した場合は、その年にいくらかの収入があり、所得税・住民税を源泉徴収などで納めているはずなので、その範囲で住宅ローン控除の恩恵を受けられます。
失業すると控除額・還付額にどう影響する?
失業期間が半年など長期になると、その年に納める所得税が大きく減るため、住宅ローン控除も「納税額の上限」に抵触する可能性があります。
たとえば、1年を通じて働いているときの所得税が20万円で、住宅ローン控除の枠も20万円だったとします。失業していなければ20万円の控除(還付)を受けられますが、半年しか働いていなければ所得税は単純計算で10万円前後まで下がります。
このケースでは、本来は20万円まで控除を受けられるのに、実際はその半分程度にとどまってしまうわけです。
所得税で引ききれない分は住民税からも控除される
所得税から控除しきれなかった金額は、翌年度の個人住民税から控除されます。ただし無制限ではなく、控除限度額はその年の所得税の課税総所得金額等×5%(最高97,500円)です(総務省)。
失業して所得が減った年は、この課税総所得金額等そのものが小さくなるため、住民税側の受け皿も同時に小さくなります。「所得税で引けなくても住民税で全部取り返せる」わけではない、という点に注意してください。
結論として、「住宅ローン控除は納税していなければ意味がない制度」ということは理解しておきましょう。
【2026年8月時点】住宅ローン減税は2030年末入居まで延長されている
制度そのものの先行きを不安に感じている方もいるかもしれませんが、住宅ローン減税の適用期限は令和8年度税制改正で5年間延長され、入居日が令和8年(2026年)1月1日から令和12年(2030年)12月31日までの入居が対象となっています(国土交通省。関連する税制改正法は2026年3月31日に成立済み)。
あわせて、省エネ性能の高い既存住宅(中古)について借入限度額の引き上げと控除期間の13年への拡充、床面積要件を新築・既存とも40㎡以上に緩和する措置などが講じられています。すでに借りている人の控除期間が短くなるような改正ではありませんので、いま返済中の方が慌てて動く必要はありません。
なお、住宅ローン控除の適用要件のひとつに「借入金の償還期間が10年以上であること」があります。この要件は、あとで説明する借り換えの場面でも効いてきます。
失業時の住宅ローン控除の手続きは?確定申告が必要
会社員であれば通常は年末調整で住宅ローン控除も一緒に手続きしてもらえますが、年の途中で失業した場合は年末調整が行われないため、自分で確定申告をする必要があります。
主な必要書類は次のとおりです。
- 退職した勤務先から交付される源泉徴収票
- 金融機関から届く住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 初年度の場合は登記事項証明書・売買契約書の写しなど
確定申告は、毎年1月1日〜12月31日の収入が対象です。「確定申告は難しそう」と感じる人もいるかもしれませんが、確定申告会場に行けば職員や税理士が記入を教えてくれますし、国税庁の確定申告書等作成コーナーやe-Taxを使えば自宅から手続きできます。還付請求後、おおむね1か月程度で指定した銀行口座に税務署から還付されます。
失業時の確定申告について
失業中に住宅ローン控除を受ける方は確定申告が必要ですが、そもそも年の途中までの給与から所得税を払いすぎている可能性があり、確定申告をすることで源泉徴収された所得税が還付される可能性が高いです。住宅ローン控除の有無にかかわらず、退職した年は申告しておいたほうが得になるケースが多いということです。
なお、失業保険(雇用保険の基本手当)の給付は課税対象ではないため、確定申告で収入として申告する必要はありません。
借り換えても住宅ローン控除は続けられる(要件と残高の計算)
収入が安定したあとに借り換えを検討する方が必ず確認すべきなのが、借り換えると住宅ローン控除はどうなるのかという点です。
国税庁の取り扱いでは、借り換えによる新しい住宅ローンは「従前の住宅ローンを消滅させるための新たな借入金」であり、原則としては住宅ローン控除の対象になりません。ただし、次の2つの要件をどちらも満たす場合は、借り換え後も引き続き控除を受けられます。
- 新しい住宅ローン等が、当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること
- 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど、住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること
実務上は通常の借り換えであれば満たせる要件ですが、返済期間を短くして10年未満にしてしまうと控除が使えなくなる点は要注意です。「早く返したいから期間を10年以内に」という判断が、控除を失う結果につながることがあります。
また、控除を受けられる年数は最初に居住した年から数えるため、借り換えによって延長されることはありません。
諸費用を上乗せして借りると、控除対象の残高は按分される
借り換え時に諸費用を上乗せして元の残高より多く借りた場合、増えた分まで控除の対象になるわけではありません。国税庁は次のように計算するとしています。
| 記号 | 内容 |
|---|---|
| A | 借り換え直前における当初の住宅ローン等の残高 |
| B | 借り換えによる新たな住宅ローン等の借入金額(当初金額) |
| C | 借り換えによる新たな住宅ローン等の年末残高 |
| ケース | 控除対象となる年末残高 | 意味 |
|---|---|---|
| A≧B(元の残高以下で借り換え) | C | 年末残高がそのまま対象 |
| A<B(諸費用などを上乗せして借り換え) | C×A/B | 増えた分は対象外として按分される |
具体例で見てみましょう。残債2,000万円(A)を、諸費用込みで2,200万円(B)に借り換え、その年の年末残高が2,150万円(C)だったケースです。
控除対象となる残高は 2,150万円 × 2,000万円 ÷ 2,200万円 = 約1,954万円。控除額はその0.7%で約13万6,000円となり、年末残高そのもの(2,150万円×0.7%=約15万円)より少なくなります。
つまり諸費用を借入額に上乗せすると、その分は控除の計算から外れるということです。諸費用を自己資金で払うか借入に含めるかを決めるときは、事務手数料の増加(定率型の場合)とあわせて、この点も判断材料に加えてください。
控除率0.7%の今、「控除目当てで多く借りる」は通用しない
かつて住宅ローン控除は「住宅ローン残高の1.0%」が控除率でした。住宅ローン金利が年1%を下回ると、支払う利息より受け取る控除のほうが大きくなる「逆ザヤ」が生じ、会計検査院からも問題が指摘されていました。
この点は2022年の税制改正で是正され、控除率は1.0%から0.7%へ引き下げられました。金利が0.7%を下回らない限り逆ザヤにはならず、「控除目当てで多めに借りて手元資金を残す」という考え方は通用しにくくなっています。
裏を返せば、借り換えで金利そのものを下げれば、控除の有無にかかわらず総返済額を減らせるという原則はより重要になりました。返済を続けている方は、残債・残り期間・金利差から借り換えの損得(諸費用を上回るメリットがあるか)を試算してみるとよいでしょう。低金利で選ばれている代表的な住宅ローンは以下のとおりです。
| auじぶん銀行の住宅ローン |
| SBI新生銀行の住宅ローン |
| ソニー銀行 |
| イオン銀行の住宅ローン |
なかでもSBI新生銀行は保証会社を利用しない仕組みのため保証料が0円で、一部繰上返済手数料もかからず、諸費用の内訳が把握しやすい設計になっています。借り換えの損益分岐を計算するとき、費用項目が少ないほど見通しを立てやすいのは実務上のメリットです。
失業中に返済が苦しいときの選択肢
控除の話とは別に、返済そのものが厳しいときは、延滞する前に動くことが最優先です。延滞が発生すると信用情報に記録が残り、その後の借り換え審査にも影響します。
- 借入先の金融機関に早めに相談する…返済期間の延長や一定期間の元金据置などで、毎月の返済額を抑えられる場合があります
- 借り換えは「収入が安定してから」…借り換えは新規の審査を受け直す手続きなので、失業中・転職直後は通りにくくなります
- 公的な支援制度も確認する…自治体の住居確保給付金など、状況に応じて利用できる制度がないか確認しておきましょう
失業と住宅ローン控除に関するよくある質問
Q. 失業した年は確定申告すべきですか?
A. はい。年の途中で退職した場合は年末調整がされていないため所得税を払いすぎていることが多く、確定申告で還付を受けられる可能性が高いです。住宅ローン控除も確定申告で手続きします。
Q. 所得が0円の年でも控除は翌年以降に繰り越せますか?
A. できません。住宅ローン控除はその年に納めた税金からの控除のため、納税額が0円の年は恩恵もありません。使えなかった分を翌年に繰り越す仕組みはなく、控除期間の中で納税している年に恩恵を受ける制度です。
Q. 所得税で引ききれなかった分は、住民税から全額戻りますか?
A. 全額ではありません。住民税からの控除には課税総所得金額等×5%(最高97,500円)という限度額があります。失業して所得が下がった年は、この限度額自体も小さくなります。
Q. 借り換えると住宅ローン控除は使えなくなりますか?
A. 原則は対象外ですが、①当初の住宅ローンの返済のためであることが明らかで、②新しいローンの償還期間が10年以上などの要件を満たせば、引き続き控除を受けられます。返済期間を10年未満に縮める借り換えは控除を失う点に注意してください。
Q. 借り換えで控除期間は延びますか?
A. 延びません。控除を受けられる年数は最初に居住した年から数えるため、借り換えを行っても期間は変わりません。
Q. 失業給付は確定申告で申告が必要ですか?
A. 雇用保険の基本手当(失業保険)は課税対象ではないため、収入として申告する必要はありません。
まとめ
- 住宅ローン控除は納めた税金の範囲でしか戻らない。所得が0円の年は恩恵もゼロで、翌年への繰り越しもできない
- 所得税で引ききれない分は住民税から控除されるが、課税総所得金額等×5%(最高97,500円)が上限
- 年の途中で失業した年は確定申告が必須。払いすぎた所得税が戻る可能性も高い
- 制度自体は2030年12月31日入居まで延長済み。返済中の人が慌てて動く必要はない
- 借り換えても「当初ローンの返済のため」+「償還期間10年以上」なら控除は継続できる。ただし諸費用を上乗せすると控除対象の残高は按分される
収入が安定したあとであれば、金利差と諸費用を突き合わせて借り換えの損得を試算する価値は十分にあります。2026年8月時点の情報をもとに整理していますが、税制の取り扱いは改正される場合があるため、最新の内容は国税庁・お住まいの市区町村および各金融機関の公式サイトでご確認ください。
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