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自然災害に備える住宅ローンは必要?火災保険・地震保険との使い分け

自然災害から住まいと家計を守る備えのイメージ

東日本大震災では、住まいを失ったのに住宅ローンだけが残ってしまった人が数多くいました。大雨による土砂災害や豪雨で自宅を失う被害も、毎年のように起きています。こうした状況を受けて、国内の金融機関は「自然災害に備えられる住宅ローン」を開発し、商品化してきました。

 

ただし、この分野の商品は入れ替わりが激しく、2026年8月時点では新規の取り扱いを終えた特約もあります。返済中の方が借り換えを検討するときは、金利差だけでなく「災害時の備えがどう変わるか」もあわせて確認しておきたいところです。このコラムでは、自然災害に備える住宅ローンの現在の状況と、火災保険・地震保険との組み合わせ方を整理します。

 

日本は自然災害が多い

日本は自然災害が非常に多い国です。内閣府『防災白書』によると、日本の国土面積は世界の約0.25%にすぎないのに、世界で発生するマグニチュード6以上の地震のうち約2割が日本周辺で起きています(集計期間により数値は変動します)。

 

東日本大震災(2011年3月11日)、熊本地震(2016年4月14日・16日)、北海道胆振東部地震(2018年9月6日)は記憶に新しく、2011年から2014年にかけては北日本の日本海側・関東甲信越で大雪の被害が甚大でした。

 

それ以外にも、広島県の土砂災害、長野県・岐阜県に被害をもたらした御嶽山の噴火など、家屋が損壊するような自然災害は日本全国で数えきれないほど発生しています。南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震も想定されており、日本に住んでいる限り、どこに住んでいても自然災害への備えは必要だと言えます。

 

自然災害の被害を受けても住宅ローンは残る

そんな日本で数千万円を借りてマイホームを持つことには、一定のリスクがともないます。原則として自然災害によりマイホームが損害を受けた場合でも、住宅ローンの返済義務は残ります。壊れたり流されたりした家に住み続けることはできないため、全壊した場合は新しく住む場所を確保しなければなりません。住めなくなった住宅の住宅ローンの返済と、新しい住まいの費用を、被災した状態で同時に工面する事態になりかねません。半壊でも、まとまった修繕費が必要になります。

 

返済が難しくなったときの2つの道

1. 破産手続きで清算する

どうしようもない状態に陥った場合の対策の1つが自己破産の申し立てです。破産手続きを申請すると、支払能力の有無が確認され、債務の支払不能と裁判所に認められた場合に債務を整理することになります。債務だけが整理されるわけではなく、資産も整理して可能な限り返済したうえで免責となるため、基本的にはすべての資産と債務がなくなり、ゼロからのスタートになります。

 

また、破産の情報は信用情報機関に登録されるため、一定期間(登録期間は信用情報機関により異なります)は住宅ローンなどの新規借り入れやクレジットカードの利用が難しくなります。悪いことをしたわけでもなく、自然災害に遭っただけで自己破産に至るのは再建の足かせになります。そこで国や金融機関は、通常の自己破産とは異なる枠組みで債務整理を行える制度を用意しています。

2. 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン

耳慣れない言葉かもしれませんが、被災した人の債務返済をサポートするガイドラインが2016年から運用されています。全国の銀行が加入する全国銀行協会が、自然災害により住宅ローンなどの返済が困難になった人の債務整理・再建手続きをサポートする目的で自主ルールとして定めたもので、東日本大震災時に使われた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」を参考に作られています。

 

あくまで銀行業界の自主ルールで法令ではないため、必ずこのとおりの債務整理ができるわけではありませんが、条件に合致すれば利用できる可能性は高いと考えてよいでしょう。主なメリットは次の2点です。

  • この手続きで債務整理が進んだ場合、個人信用情報に登録されない(いわゆるブラックリスト扱いにならない)ため、その後に新たなローンを借りたりクレジットカードを持ったりできる。
  • – 通常の破産手続きと違い、保有するすべての財産を差し出す必要がない。

 

このガイドラインで住宅ローンの返済を免除できる人には、「住居が災害の影響を受けたことにより、住宅ローンや住宅のリフォームローンの返済ができない、または近い将来に返済できなくなることが確実であること」「過去にローンの返済が滞ったことがないこと」などの条件があります。破産手続きより有利に債務整理でき、多少再建しやすくなりますが、マイホームを手放さなければならない点は変わりません

 

なお、制度の内容や相談先は全国銀行協会の相談室(0570-017109)や借入先の金融機関で確認できます。実際に被災した場合は、返済を延滞する前に早めに相談することが重要です。

 

公的支援は「セーフティネット」であって生活水準の維持ではない

国や自治体の支援もあります。代表的なのが被災者生活再建支援制度で、内閣府の説明によると、住宅が全壊するなど生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、基礎支援金(全壊で100万円、大規模半壊で50万円)と、住まいの再建方法に応じた加算支援金(建設・購入200万円、補修100万円、賃借50万円)が支給されます。合計は最大300万円です(世帯人数が1人の場合は、それぞれ4分の3の額になります)。基礎支援金と加算支援金は同時に申請する必要がなく、再建方法が決まってから加算分を申請することもできます。

被災者生活再建支援金の基礎支援金と加算支援金の内訳を示した棒グラフ
世帯人数が1人の場合は、それぞれ4分の3の額になります。補修なら加算支援金は100万円、賃借なら50万円です。

 

ただし、数千万円の住宅ローンが残っている家庭にとって、最大300万円は再建の足がかりにはなっても、住宅ローンを消せる金額ではありません。公的な取り組みは、どうしてもセーフティネット(本当に困難な状況に陥った人をどう救済するか)が中心になります。自宅を失い返済のめども立たない人を助ける仕組みは整えられていく一方で、被災前の生活水準を維持できるようにする施策はほとんどありません。そこから先は自分で備えるしかない、というのが実情です。

 

「自然災害時債務免除特約」付き住宅ローンの現在(2026年8月時点)

注目を集めてきたのが「自然災害時債務免除特約」が付帯する住宅ローンです。三井住友銀行が日本で初めて提供を開始して話題となり、その後いくつかの銀行が取り扱いを始めました。ただしこの分野は商品の入れ替わりが激しく、取り扱いを終えたものもあります。2026年8月時点の状況は次のとおりです。

金融機関・商品内容費用(上乗せ)
三井住友銀行
自然災害時返済一部免除特約(約定返済保障型)
大雨・落雷など幅広い自然災害が対象。罹災証明書の「全壊」「大規模半壊」「半壊」の程度に応じて、一定期間の約定返済額(元金+約定利息)相当額を払い戻す。「一部損壊」は対象外住宅ローン金利+年0.10%
三井住友銀行
自然災害時返済一部免除特約(残高保障型)
地震・噴火・津波で対象物件が「全壊」した場合に、その時点の住宅ローン残高の50%を保険金で返済に充当。全壊のみが対象で、大規模半壊・半壊・一部損壊は対象外借入利率+年0.50%
SBI新生銀行
自然災害時債務免除特約(安心パックS)
2017年10月に取扱いを開始し、契約時の事務手数料だけで付帯できる点が特徴だったが、新規の付帯は終了(2024年10月31日ご契約分まで)。すでに特約を付けている方については、罹災の程度に応じて約定返済の24回・12回・6回分を免除する取り扱いが続いている—(新規申込は不可)

 

三井住友銀行の2つの型はどちらか一方しか契約できません。幅広い災害に対応するが免除額は返済数か月分にとどまる「約定返済保障型」と、地震・噴火・津波の全壊に絞って残高の半分を減らせる「残高保障型」では、守れるものがまったく違う点に注意してください。

 

SBI新生銀行が2017年10月に「安心パックS」の名称で取扱いを開始した特約は、金利上乗せではなく契約時の事務手数料で付帯できる方式で、当時としては割安な備えでした。この特約の仕組みはこちらの記事でも詳しく紹介していますが、現在は新規に付けることができないため、これから借りる・借り換える方の選択肢としては数えられません

 

そもそも自然災害時債務免除特約とは、自然災害で住居が損壊したときに、一定の期間について住宅ローンの返済を免除(払い戻し)するものです。破産や債務整理と違って「資産の整理」をともなわず、返済能力があっても条件を満たせば適用される点がポイントです。ただし免除されるのは返済の一部であり、これだけで被災後の再建がまかなえるわけではありません。「補助的な備え」と位置づけるのが適切です。

三井住友銀行の自然災害時返済一部免除特約の2つの型の上乗せ金利を比べた棒グラフ
約定返済保障型は幅広い自然災害が対象で一定期間の約定返済額を払い戻し、残高保障型は地震・噴火・津波による全壊時に残高の50%を充当します。両方を同時に契約することはできません。

 

自然災害に備えるための基本は火災保険と地震保険

住宅を購入する際に加入する火災保険は、自然災害にも対応しています。対応しているというより、自然災害への基本的な備えは火災保険です。ただし一般的な火災保険には「地震・噴火またはこれらによる津波」を原因とする損害の補償は含まれません。地震への備えは地震保険を付帯するのが基本です。

 

地震保険は保険金の上限が決まっている

ポイントになるのは、地震保険で受け取れる金額です。大規模地震が起きれば保険金の支払いは巨額になるため、地震保険は政府が再保険する形で運営され、契約できる金額に制度上の枠が設けられています。財務省の説明によると、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で設定し、建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度です。また地震保険は単独では契約できず、火災保険とセットで加入します。

 

たとえば建物の火災保険金額が1,500万円の場合、火災などの損害では最大1,500万円が対象になりますが、地震・噴火・津波による損害では50%で契約していれば最大750万円、30%なら最大450万円が上限です。

火災の場合と地震・噴火・津波の場合で受け取れる保険金の上限を比べた棒グラフ
地震保険の保険金額は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定し、建物は5,000万円・家財は1,000万円が限度です。実際の支払額は損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)に応じて決まります。

 

この差をどう埋めるかが、備えを考えるうえでの分かれ道になります。判断の軸は次の2つです。

  • ①火災保険金額の半分までしかカバーされないことを不安に感じるか
  • ②その差額を埋めるために、追加の保険料や金利上乗せを負担する気があるか

 

①を不安に感じるなら、火災保険+地震保険に加えて、自然災害時の免除特約を付けられる住宅ローンを選ぶという組み合わせが考えられます。②の負担が気になるなら、まず地震保険の保険金額の設定(30%か50%か)と保険期間を見直すほうが、金利上乗せより調整しやすい場合もあります。地震保険料は建物の構造と所在地で大きく変わり、耐震等級などによる割引もあるため、実際の保険料は見積もりで確認してください。

 

借り換えのタイミングで見直したい3つのこと

借り換えは、金利を下げるだけでなく「災害時の備え」を組み直せる機会でもあります。次の3点を必ずセットで確認してください。

1. 特約の上乗せ金利は、総返済額に効いてくる

自然災害時の免除特約は、多くの場合金利への上乗せで費用を負担します。年0.10%と年0.50%では負担がまったく違い、とくに年0.50%の上乗せは、借り換えで下げた金利差をそのまま打ち消してしまうこともあります。「借り換え後の金利+上乗せ分」で比較するのが鉄則です。

2. 火災保険・地震保険は借り換えとセットで棚卸しする

火災保険は建物にかける契約なので、借り換えたからといって必ず入り直す必要はありません。ただし、保険金額の設定が購入当時のままになっていないか、水災補償が付いているか、地震保険を30%で契約していないかは、この機会に確認する価値があります。金融機関によっては借り換えにあたって手続きが必要な場合があるため、借り換え先にも確認しておきましょう。

3. 特約がなくても、ガイドラインと公的支援は使える

前述の債務整理ガイドラインは、特約の有無にかかわらず利用できます。特約はあくまで上乗せの備えであり、「特約がないと被災時に何も救済されない」わけではありません。過度に不安をあおられて、割高な条件の借り換えを選ばないようにしてください。

 

なお、SBI新生銀行の住宅ローンのように、自然災害の特約は用意していないものの保証料0円・一部繰上返済手数料0円で諸費用の内訳が分かりやすく、団信の保障が手厚い金融機関もあります。同行では一般団信に加えて全疾病保障付団信を上乗せ金利なしで選べます(ガン団信は年0.10%上乗せ)。自然災害だけでなく、病気やケガで働けなくなるリスクまで含めて、どこにいくら払って備えるかを総額で比べることが大切です。

 

<自然災害(地震・噴火を含む)への備えを手厚くしたい人>

・火災保険+地震保険(50%で設定)+自然災害時の免除特約を付けられる住宅ローン

 

<地震・噴火以外の災害を厚めにし、地震・噴火には最低限備えたい人>

・火災保険(水災補償あり)+地震保険+団信の保障が手厚い住宅ローンで総返済額と保障のバランスを取る

 

自然災害に備える住宅ローンに関するよくある質問(FAQ)

Q. いま借りている住宅ローンに、自然災害時債務免除特約を後から付けられますか?
A. 一般に、この種の特約は借り入れ・借り換えの契約時に付けるもので、返済が始まってから追加することは想定されていません。付けたい場合は借り換えの検討とセットになります。取り扱いの有無は金融機関によって異なるため、必ず各行の公式サイトで確認してください。

Q. 借り換えのときにも自然災害時の免除特約は選べますか?
A. 取り扱っている金融機関であれば、借り換えでも選べる場合があります。ただし2026年8月時点で、SBI新生銀行の「安心パックS」の自然災害時債務免除特約は新規の付帯を終了しています(2024年10月31日ご契約分まで)。商品の入れ替わりが早い分野なので、記事や比較サイトの情報だけで判断せず、申し込む時点の公式情報を確認してください。

Q. 火災保険・地震保険があれば特約は不要ですか?
A. 一概には言えません。地震保険は火災保険金額の30〜50%(建物5,000万円・家財1,000万円が限度)までで、評価額の全額はカバーされません。地震・噴火への備えを厚くしたいなら「火災保険+地震保険+特約」、保険料を抑えたいなら地震保険の設定を含めて組み替えるなど、費用と想定保障額を比べて選びましょう。特約は補助的な備えで、基本は火災保険・地震保険です。

Q. 被災して返済できなくなったら、まずどこに相談すればよいですか?
A. まずは借入先の金融機関と、全国銀行協会の相談室(0570-017109)です。自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインを利用する場合も、手続きは借入先への申し出から始まります。延滞してしまう前に相談することが、選べる選択肢を残すうえで重要です。

 

※本記事は2026年8月時点で各社公式サイト等を確認した内容です。特約の取扱状況・費用・保障内容、保険の条件は改定されることがあります。最新の内容は必ず各金融機関・各保険会社の公式サイトでご確認ください。

 

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