住宅ローン控除の年末調整の電子化|借り換え後の控除も解説

<2026年8月更新>
かつて「年末調整のネット完結」が報じられてから数年が経ち、その仕組みはすでに実現・定着しています。国税庁は令和2年(2020年)分の年末調整から電子化に対応し、令和3年(2021年)分からは、それまで唯一電子化の対象外だった「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)申告書」も電子化の対象に加わりました。あわせて、年末調整の各種申告書への押印も廃止されています。
この記事では、住宅ローン控除の年末調整がいまどこまで電子で完結するのかを2026年8月時点の情報で整理したうえで、当サイトのテーマである「借り換えをした人の住宅ローン控除はどうなるのか」まで踏み込んで解説します。借り換えは年末残高の計算方法が変わる場面があり、電子化されてもここだけは自分で理解しておく必要があるポイントです。
いま、住宅ローン控除の年末調整はどこまで電子でできるのか
会社員(給与所得者)が住宅ローン控除を受ける流れは、昔もいまも「1年目は確定申告/2年目以降は年末調整」で変わりません。変わったのは、そのやり取りが紙から電子データに置き換わった点です。
| 手続き | だれが・いつ行うか | 電子化のポイント |
|---|---|---|
| 1年目(居住した年の翌年) | 本人が確定申告 | マイナンバーカード対応スマホ+e-Taxで作成・送信まで完結。書面申告より還付が早い傾向 |
| 2年目以降 | 勤務先の年末調整 | 国税庁の「年調ソフト」で申告書を作成し、控除証明書などのデータとあわせて勤務先へ電子提出 |
| 個人事業主など | 毎年、本人が確定申告 | 年末調整の対象外。ただしe-Taxによる電子申告は同じく利用できる |
1年目の確定申告をすると、2年目以降の年末調整で使う「住宅ローン控除証明書」が税務署から交付されます。電子交付を選んでおけば、以降はデータで受け取って年末調整までオンラインでつなげられます。ただし交付の時期は借入先の対応状況によって異なる場合があるため、届かないときは国税庁の案内を確認してください。

令和8年(2026年)分の年調ソフトは、10月に正式版が出る予定
年末調整の申告書を作るための国税庁の無料ソフトが「年末調整申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」です。スマートフォン(iOS/Android)でも、パソコン(Windows/macOS)でも利用できます。
2026年分については、国税庁が2026年8月7日に「令和8年分【プロトタイプ】」を公開しており、正式版は2026年10月に公開予定とされています。プロトタイプはあくまで動作確認用で、マイナポータルからの証明書取得には対応していません。実際に年末調整で使うなら、10月以降に公開される正式版を待つのが確実です。
年調ソフトを使うと、保険料控除証明書や住宅ローン控除証明書などのデータを取り込んで申告書を自動作成できるため、控除額の計算ミスや記入漏れが起きにくいのが実務上のメリットです。
年末残高証明書は「調書方式」へ移行中。ただし当分は従来どおりの人が多い
住宅ローン控除でもうひとつ大きな変更が、金融機関が発行する「年末残高証明書」の扱いです。令和4年度税制改正で、次の2つの方式が用意されました。
| 方式 | 年末残高の伝わり方 | 利用者がすること |
|---|---|---|
| 証明書方式(従来) | 金融機関が本人に年末残高証明書を交付 | 証明書を確定申告書に添付、または勤務先へ提出する |
| 調書方式(新) | 金融機関が税務署へ「年末残高調書」を提出し、税務署から本人へ年末残高情報が提供される | あらかじめ金融機関へ「住宅ローン控除の適用申請書」(マイナンバーを記載)を提出。年末残高証明書の添付は不要 |
ここで誤解しやすいのが「もう証明書は届かないのか?」という点です。国税庁は、システム改修への対応が困難な金融機関について当分の間は証明書方式のままでよい経過措置を設けており、この経過措置は特段の手続きなくすべての債権者(金融機関)に適用される取扱いとされています。つまり、借入先が調書方式に移行しているかどうかで手続きが変わるのが現状です。まずは自分の借入先がどちらなのかを確認してください。
また、マイナポータル連携で年末残高情報を自動入力するには、確定申告より前(借入を開始した年)に、e-Taxで情報取得に同意する事前準備が必要です。ここを飛ばすと申告の直前に慌てることになるので、借り換え直後の人はとくに注意しましょう。
【本題】借り換えをすると、住宅ローン控除はどうなるのか
借り換えは「いまのローンを一括返済するために、新しいローンを借りる」手続きです。そのため新しいローンは、原則としては住宅ローン控除の対象になりません(住宅の新築・取得・増改築に直接必要な借入金ではないため)。
ただし国税庁は、次の2つをどちらも満たす場合には、借り換え後も引き続き住宅ローン控除を受けられるとしています。
- 新しい住宅ローン等が、当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること
- 新しい住宅ローン等が償還期間10年以上であるなど、住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること
実務で見落とされがちなのは2つ目の「10年以上」です。借り換えは「残りの期間を短くして総返済額を減らす」目的で行うことも多く、返済期間を10年未満に縮めてしまうと、その時点で控除が使えなくなります。控除の残り年数が多い人ほど、期間短縮の効果と控除を失う損失を並べて比べる必要があります。
また、控除を受けられる年数は「居住の用に供した年」から数えた一定期間で、借り換えによって延長されることはありません。「借り換えたから控除も仕切り直し」ではない点は必ず押さえておきましょう。
諸費用を上乗せして借りると、控除対象の年末残高は圧縮される
借り換えでは、事務手数料や登記費用などの諸費用を新しいローンに含めて借りるケースがあります。この場合、増えた分まで控除の対象になるわけではありません。国税庁は、控除の対象となる年末残高を次のように定めています。
- A=借り換え直前における当初の住宅ローン等の残高
- B=借り換えによる新しい住宅ローン等の借入金額(当初金額)
- C=借り換えによる新しい住宅ローン等の年末残高
としたとき、A≧Bなら対象額=C、A<Bなら対象額=C×A/B となります。つまり当初残高より多く借りた場合は、その割合の分だけ控除対象が目減りするという仕組みです。

たとえば、借り換え直前の残高A=2,000万円のところ、諸費用を上乗せしてB=2,200万円を借り、その年の年末残高C=2,150万円だったとします。A<Bなので対象額は2,150万円×2,000万円÷2,200万円=約1,954万円。年末残高よりおよそ196万円小さい金額が控除の計算に使われます。控除率が0.7%なら、単純計算で年あたり約1.3万円の差です。
諸費用を自己資金で払うか、ローンに上乗せするかは、金利差だけでなくこの控除の目減りも含めて考えると判断を誤りません。損益分岐を計算するときは、「金利差による利息の減少」から「諸費用」と「控除額の減少分」を差し引くのが正確なやり方です。
借り換えの年は、書類の準備が1回だけ増える
借り換えをした年は、借入先が変わったことを年末調整・確定申告の書類に反映する必要があります。新しい借入先から年末残高証明書を受け取る(または調書方式の適用申請書を提出しておく)ほか、控除対象額の計算で上記のA・Bの金額が必要になります。借り換え直前の残高が分かる資料(返済予定表や完済時の明細)は、必ず保管しておきましょう。電子化されても、この数字だけは自分の手元にある記録が頼りです。
よくある質問(借り換えと住宅ローン控除の電子手続き)
Q. 借り換えをすると、控除を受けられる期間は延びますか?
A. 延びません。控除できる年数は居住の用に供した年を起点に決まり、借り換えでは延長されないと国税庁が明示しています。
Q. 借り換え後の返済期間を9年にしたら、控除はどうなりますか?
A. 償還期間10年以上という要件を満たさなくなるため、控除の対象外になります。期間短縮を検討する場合は、残っている控除額と比べてから決めてください。
Q. 借り換えたら、初年度のように確定申告をやり直す必要がありますか?
A. 会社員であれば、借り換え後も年末調整で手続きできるのが原則です。ただし借入先や借入額が変わるため、新しい借入先の年末残高の資料と、借り換え直前の残高が分かる資料を用意する必要があります。個別の記載方法は国税庁の案内や勤務先の指示に従ってください。
Q. 年末残高証明書が届きません。調書方式に変わったからでしょうか?
A. その可能性はありますが、経過措置により当分の間は証明書方式のままの金融機関も多いため、まずは借入先に発行状況を確認するのが確実です。調書方式の場合は、事前に「住宅ローン控除の適用申請書」を金融機関へ提出しているかも確認してください。
Q. 手続きにマイナンバーカードは必須ですか?
A. 紙での手続きも引き続きできますが、マイナポータル連携で控除証明書などのデータを一括取得するにはマイナンバーカードが必要です。調書方式の適用申請書にもマイナンバーの記載が求められます。電子で完結させたいなら、実質的に用意しておきたい1枚です。
まとめ:電子化されても、借り換えの「数字」だけは自分で押さえる
住宅ローン控除の年末調整は、年調ソフトとマイナポータル連携によってほぼオンラインで完結できるところまで来ています。2026年分についても、10月に年調ソフトの正式版が公開される予定です。
一方で、借り換えをした人は「10年以上の返済期間」「控除年数は延びない」「上乗せ分は控除対象が圧縮される」という3点だけは、システムが自動では教えてくれません。借り換えで得をするかどうかを判断するときは、金利差と諸費用に加えて、控除額がどう変わるかまで含めて計算するのが実利的です。
なお、金利面での借り換え先を比較する際は、諸費用の分かりやすさや団信の内容もあわせて見ておきたいところです。たとえばSBI新生銀行は、保証料や一部繰上返済手数料がかからず、一般団信の保険料上乗せもない設計で、諸費用の全体像を把握しやすい選択肢のひとつです。店舗相談とオンライン手続きの両方に対応している点も、書類の準備に不安がある人には現実的な安心材料になります。具体的な手続きや必要書類、最新の適用条件は変更される場合があるため、国税庁および各金融機関の公式サイトで必ずご確認ください。
以下は、この仕組みが構想されていた当時(2020年5月)の解説です。経緯の参考としてお読みください。
<2020年5月26日投稿>
2017年8月ごろ財務省と国税庁が住宅ローン控除、生命保険控除等の年末調整をネットで完結する仕組みを2020年度を目途に実現を目指していると報道されました。

当時、年末調整のネット完結化にはマイナンバーカードが必要と言われていました。マイナンバーカードの普及は2017年ごろの大きな課題で、2020年になっても普及率は伸び悩み、新型コロナウイルス対策の給付金の申請で再び注目を集めるという皮肉な結果になっていました。
住宅ローンを利用している人にとって、金融機関から発行される住宅ローン残高証明書を保管したり、年末調整用の書類に記入・捺印して勤務先に提出する手間がなくなるため、大きなメリットになります。実際、その後の制度整備によって、これらの手続きは電子データでのやり取りが可能になりました。
年末調整で住宅ローン控除を利用しているサラリーマンだけでも300万人以上存在していると言われています。サラリーマン以外の人は確定申告で住宅ローン控除を活用していると思いますが、個人事業主は今も住宅ローン控除を確定申告で行う点は変わりません(こちらもe-Taxによる電子申告が可能です)。

