変動金利から固定金利への借り換え|2026年の判断ポイント

この特集記事では「変動金利から固定金利に借り換える意味」について解説します。とくに2024年以降、日本の金利環境が『下がり続ける時代』から『金利のある時代』へと大きく転換したことを踏まえ、2026年8月時点でいま固定金利に借り換える意味を整理します。
目次
住宅ローンの金利は、基本的に「変動金利<固定金利」が成り立ち、変動金利の方が低いのが一般的です。にもかかわらず、変動金利から固定金利へ借り換える人は一定数存在します。背景には金利の先行き不安があり、たとえば日銀が金融政策を見直す局面では、固定金利に借り換える動きが増えたという報道がたびたび見られます。
あえて金利の高い住宅ローンに借り換えるのには理由があります。結論としては、「将来金利が上昇しそうだから、相対的に金利が低い今のうちに固定しておく」「金利が上がるのではないかと不安を抱えながら暮らすのが嫌だから固定したい」「民間住宅ローンの審査に通らずフラット35(固定金利)に借り換えた」のいずれかが大半です。
近年の金利環境の変化(金利のある時代へ)
これまで日本の住宅ローン金利は長く低下・低位安定が続いてきましたが、状況は変わりました。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを進めています。2026年6月16日の金融政策決定会合では、政策金利(無担保コールレート〔オーバーナイト物〕の誘導目標)を1.0%程度へ引き上げました。1990年代半ば以来の水準です。続く7月30・31日の会合では1.0%程度で据え置きとなっています(出典:日本銀行)。
ここで大切なのは、変動金利と固定金利では「見ている金利」が違うということです。
- 変動金利は、主に短期プライムレート(政策金利の影響を強く受ける短期の金利)を基準にしています。
- 固定金利(10年固定・フラット35など)は、主に長期金利(10年国債の利回り)の動きを反映します。
そのため、「長期金利が下がったから変動金利も下がる」といった単純な連動はしません。長期金利は日々動いており、財務省が公表する国債金利情報では、10年国債の金利は2026年8月3日の年2.824%から、8月18日には年2.934%まで上昇し、翌19日は年2.894%と、短期間で上下しています。「上がり続ける」とも「下がり始めた」とも言い切れないのが実際のところです。
全期間固定の代表であるフラット35は、2026年8月の借入金利(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下)の最も多い金利が年3.290%となっています(住宅金融支援機構。取扱金融機関ごとに金利は異なります)。「変動も固定もこれから上がるかもしれない」局面に変わった点が、以前との大きな違いです。
※金利は時点によって変わります。フラット35の金利は毎月更新されますので、最新の適用金利は各金融機関・フラット35公式サイトでご確認ください。
いま上がっているのは主に「固定」——当編集部の実測から
当編集部は毎月、各金融機関の公式の住宅ローン金利ページを実際に開いて表示金利を取得し、銀行・商品・借入区分(新規/借換)・金利タイプ・固定期間・融資率の単位に分けて集計しています。2026年8月4日に14の金融機関・機関について確認した127件のうち、前月(2026年7月)と比較できた127件の内訳は、引き上げ102件・据え置き23件・引き下げ2件でした。

金利タイプ別に見ると、傾向がはっきり分かれます。変動金利は27件のうち引き上げが4件で、23件は据え置き。一方で固定10年は24件のうち22件、固定20年前後は20件すべて、固定35年前後は16件すべて、フラット35・50は38件すべてが引き上げでした。
つまり、この局面で先に動いているのは固定金利のほうだということです。長期金利の上昇が固定金利に先に効き、短期プライムレートを基準とする変動金利は動くタイミングが違う——という構図が、実際の数字にも表れています。「金利が上がっている」という報道を、自分の変動金利がすぐ上がる話だと受け取らないことが、借り換えを冷静に判断する第一歩です。
※上記は当編集部が各行公式サイトを確認した件数の内訳です(銀行・商品・借入区分・期間などの組み合わせ単位で数えています)。「◯割の銀行が引き上げた」という銀行数の話ではありません。またフラット35・50の38件は、住宅金融支援機構が公表する同一の最頻金利を取扱金融機関ごとに1件として数えたものです。
変動金利の特徴について
変動金利は名前のとおり、金利が変動する——正確には「銀行が適用金利を変動させる権利を持っている金利タイプ」です。国内の短期金利市場(無担保コール翌日物・短期プライムレートなど)を参照しながら金融機関が適用金利を決めるため、突然、銀行の一存で大きく金利を引き上げることは通常ありません。
市場金利・短期金利が上昇し、それに合わせて銀行が住宅ローン金利を調整することで、変動金利の住宅ローンの金利が上がっていきます。日銀が利上げ局面に入った今、変動金利は「これまでの低位安定」から「上昇しうる」段階に移ったと理解しておく必要があります。
なお、多くの銀行の変動金利には「5年ルール(金利が上がっても5年間は毎月の返済額を据え置く)」「125%ルール(見直し後の返済額は従前の125%まで)」といった負担急増を和らげる仕組みがあります。ただし注意点が3つあります。
- 適用されるのは元利均等返済の場合です(元金均等返済は対象外とされているのが一般的です)。
- 返済額が据え置かれても、金利が上がれば返済額に占める利息の割合が増え、総返済額は増えます(元金が減りにくくなります)。
- 見直し後の返済額が上限の125%を超えるような上昇があった場合、未払利息が発生し、返済期間終了後に残った未払利息を一括で返済する必要が生じることがあります(みずほ銀行の公式説明)。
5年ルール・125%ルールは「返済額の上昇を先送りする仕組み」であって、「利息の負担が増えない仕組み」ではありません。ルールの有無・内容は銀行によって異なるため、必ずご自身の契約内容を確認してください。
変動のままだと、返済額はいつ上がる?
借り換えを検討するなら、「そもそも自分の返済額はいつ変わるのか」を先に押さえておくと判断がぶれません。変動金利は、金利が上がったその月にすぐ返済額が変わるわけではないからです。
たとえばみずほ銀行の場合、借入中の変動金利の見直しは年2回(4月1日・10月1日)で、見直された金利は3か月後の返済(7月・1月)から適用されると公式に案内されています。つまり、いま基準金利が動いても、実際に返済額へ反映されるのは数か月先という順番です。
見直しの基準日も、反映される月も、銀行や契約(毎月見直し型・年2回見直し型など)によって異なります。「自分の場合はいつ、いくらになるのか」は、返済予定表と借入先の公式サイト・問い合わせ窓口で必ず確認してください。借り換えの検討は、その数字を把握してから始めるほうが確実です。
変動金利から固定金利へ乗り換えるメリット
変動金利には金利上昇リスクがあり、完済までの毎月の返済額・総返済額が増減する可能性があります。一方、固定金利で借りれば毎月の返済額・総返済額を確定できます。固定金利を選ぶ最大の理由は「金利を固定できる」ことで、金利上昇が見込まれる局面では、固定する期間を通じて上昇リスクを避けられる点が安心材料になります。
ただし、金利水準自体は変動金利より高めです(メガバンクの変動金利より低い10年固定を出すネット銀行もありますが、全期間固定はより高くなります)。結果として変動金利がそれほど上がらなければ、変動で借り続けた方が総返済額は少なくなる可能性もあります。固定金利は「金利が上がっても返済額が増えない」という安心への対価(いわば保険料)と捉えると分かりやすいでしょう。
借り換えを考えるときのチェックポイント
変動から固定への借り換えを検討する際は、次の点を確認しましょう。
- 残債・残期間:残高が多く残期間が長いほど、金利を固定する効果(上昇リスク回避の価値)は大きくなります。逆に残期間が短いと、諸費用を回収しきれないことがあります。
- 諸費用との損益分岐:借り換えには事務手数料・登記費用などの諸費用がかかります。「諸費用の総額 ÷ 1年あたりの利息の軽減額 ≒ 回収にかかる年数」を目安に、固定化による安心と費用が見合うかを試算しましょう。
- 固定する期間:10年固定・全期間固定(フラット35など)で性格が異なります。当初固定は期間が終わると変動金利へ自動的に切り替わるのが一般的なので、「10年後にまた金利リスクが戻ってくる」点を織り込んでおく必要があります。完済まで返済額を確定したいなら全期間固定が有力です。
- 団信の条件をそろえる:がん保障などを付けると金利に上乗せされます。上乗せ後の金利で比べないと、比較になりません。
全期間固定で借り換えたい場合はフラット35が代表的な選択肢ですが、長期の固定金利を扱う民間銀行もあります。たとえばSBI新生銀行は長期の固定金利型を用意しており、保証料が原則0円、一部繰上返済・全額繰上返済の手数料も原則無料と、借り換え後にかかる費用の見通しを立てやすい点は比較する価値があります(融資事務手数料は借入金額×2.20%〔税込〕の定率型です。なお、かつて選べた事務手数料の定額型は2024年10月31日申込分で取り扱いが終了しています。金利・手数料・団信の内容は時期により変わるため、最新は公式でご確認ください)。
変動から固定への借り換えでよくある質問
Q. 固定に替えるなら、いま急いだ方がよいですか?
「急ぐべきかどうか」を金利の予想で決めることはおすすめできません。数年先の金利を正確に当てられる人はいないからです。判断材料になるのは予想ではなく、ご自身の残債・残期間・家計の余力です。金利が2%上がったときの返済額に耐えられないなら固定化の価値は高く、耐えられるなら変動を続ける選択も合理的——という順番で考えると、決めやすくなります。
Q. 借り換えずに、いまの銀行で固定に切り替えることはできますか?
金利タイプの変更(固定金利特約)を扱っている銀行であれば可能な場合があります。借り換えと違って登記費用や新しい事務手数料がかからないぶん、コストを大きく抑えられるのが利点です(変更手数料がかかる銀行もあります。たとえばSBI新生銀行では当初固定金利を選び直す際に5,500円〔税込〕)。借り換えを検討する前に、まずいまの借入先で切り替えができるかを確認してみてください。
Q. 10年固定と全期間固定は、どちらが安心ですか?
「安心」の意味が違います。10年固定は当初10年の返済額を確定できますが、期間終了後は変動金利へ自動的に切り替わるのが一般的で、そのときの金利水準は分かりません。完済までの返済額を確定させたいなら全期間固定です。残期間が10年程度なら当初固定でも実質的に全期間固定に近くなるなど、残期間との組み合わせで考えるのが実務的です。
Q. 固定に替えたあと、変動があまり上がらなかったら損ですか?
結果だけを見れば、支払った金利差の分は多く払ったことになります。ただし固定金利は「返済額が増えない」ことを買う保険料に近い性質です。火災保険を使わなかったことを損と呼ばないのと同じで、返済計画が崩れないことに価値を感じるかどうかで判断してください。
最後に
借り換えで変動金利から固定金利へ変更する一番のメリットは、金利を固定する期間の返済額を確定できることです。超長期固定であれば、完済までの返済額を固定してしまうこともできます。金利が上昇しうる局面では、この「確定できる安心」の価値は以前より高まっています。
変動金利より高い金利が適用されることを理解したうえで、金利を固定しておくことに納得できる方にとって、固定金利への借り換えは有力な選択肢です。
数十年先の金利や経済を正確に予測できる人はいません。変動金利は金利動向に左右されやすく、固定金利は堅実といえますが、どちらが正解かは結果が出てみないと分かりません。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、ご自身が納得できる借り換えを行うことが何より重要です。
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