35歳以下ならフラット35の団信加入は損?生命保険との比較と借り換え時の選び方

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する長期固定型の住宅ローン「フラット35」は、一般的な住宅ローンでは原則加入必須の団信(団体信用生命保険)が任意加入のため、健康状態に不安を抱える人がマイホームを購入・借り換えする場合の有力な選択肢となる住宅ローンです。
団信やワイド団信に加入できない人の解決策の1つとしてフラット35(団信加入なし)が選ばれているのは事実ですが、団信は、自身に万が一のことがあったときに残された家族がマイホームに住み続けられるようにするための保障であり、特別な理由がなければ加入しておくべきものです。
この特集記事では「団信」を1つの生命保険として捉えた場合に、一般的な生命保険と比較してお得な商品なのかを検証します。一般的な生命保険は加入時の年齢が若いほど保険料が安くなる一方、「住宅ローンの団信」は加入時の年齢で費用負担が変わらない——この違いが検証のポイントです。
一般的な生命保険の特徴
一般的な生命保険の特徴を簡単におさらいしておきましょう。生命保険は以下の3種類に大別できます。
| 定期死亡保険(定期保険) | 保障される期間(保険金を受け取れる期間)が「加入から10年間・20年間・30年間」や「加入から65歳まで」というように予め決められた保険。保険料の負担は抑えられるが、所定の期日までに利用する機会がなければ保険金を受け取れない。(契約を更新できる商品も存在) |
| 終身死亡保険(終身保険) | 保障される期間は定められておらず、亡くなるまで保障される。保険料負担は定期死亡保険よりも高くなる。 |
| 就業不能保障保険 | 基本的には定期死亡保険と同じように期間が定められているが、保険金を分割して受け取れる保険。一般的には早く亡くなった場合の方が受け取れる保険金は多くなり、期日(保険金満了日)に近いタイミングで亡くなった場合は受け取れる金額が少なくなる。 |
※定期死亡保険と終身死亡保険を組み合わせることも可能です。
なお、一般的に生命保険は若くして加入した方が毎月の保険料の負担が少なく済みます。これが、これから比較する団信と大きく異なる点です。
団信(団体信用生命保険)の特徴
団信は「保険金の受取金額」が「住宅ローンの残高」として定められている生命保険です。年齢を重ねる(≒住宅ローンの返済が進む)ことで、受け取れる保険金の金額が少なくなっていくタイプの保険と考えることができます。
フラット35では2017年10月から団信の保険料(特約料の年払い)が金利組み込み型に変わり、現在は「新機構団信付き」の金利が標準です。そして、新機構団信に加入しない場合の借入金利は「新機構団信付きフラット35の借入金利−0.2%」と機構が公式に定めています(2026年7月時点)。
つまり、フラット35の団信の実質的な保険料は金利0.2%相当と考えることができるわけです。
住宅ローンを借りる年齢は千差万別ですが、このルールは年齢によって変わりません。一般的な生命保険と違って、団信は「若い人も年齢を重ねた人も一律の保険料を負担する」という点がもう1つの特徴です。
さらに、フラット35の新機構団信は返済開始後に加入し直すことができないため、契約時(借り換え時)にしっかりと検討する必要があります。

新機構団信の保障範囲は「死亡・所定の身体障害状態」
注意したいのは保障範囲です。民間銀行の一般団信の多くが「死亡・所定の高度障害状態」を保障するのに対し、フラット35の新機構団信は「死亡」と「身体障害者福祉法に定める1級または2級の障害に該当し身体障害者手帳の交付を受けたとき」に保険金が支払われます。公的な手帳の交付という明確な基準で判定される点が特徴です。がん・急性心筋梗塞・脳卒中に備えたい場合は、借入金利に年0.24%上乗せの「新3大疾病付機構団信」(介護保障付き)も選べます。
保険料と保険金の比較
加入時年齢30歳の場合の例
ここでは「住宅ローン4,000万円・元利均等の35年返済で、住宅ローンの金利に換算して0.2%相当が団信の保険料であること」を前提にシミュレーションしています。商品性が異なる保険の比較になるため、できるだけ比較しやすい条件にしています。
比較対象の生命保険は、加入時年齢30歳・65歳までの保障期間の「定期死亡保険」としました。受取保険金は3,000万円・男性のケースで、保険会社のシミュレーションツールを使って試算したものです(保険料は試算当時のもので、年齢・会社・商品により異なります)。
| 団信 | 定期死亡保険 | |
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保険料の支払い総額(35年間支払った場合) |
約142万円 | 約290万円 |
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受取保険金(契約直後) |
約4,000万円 | 3,000万円 |
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受取保険金(10年後/40歳時点) |
約3,000万円 | 3,000万円 |
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受取保険金(20年後/50歳時点) |
約1,900万円 | 3,000万円 |
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受取保険金(30年後/60歳時点) |
約680万円 | 3,000万円 |
※団信の受取保険金は目安。実際は住宅ローンの返済スピードによって異なります。
単純比較は危険ですが、「団信に加入せず一般的な生命保険(定期死亡保険)で代替する」とした場合、上記の条件でも2倍ぐらい多く支払うことになります。その代わり、受取保険金が期間中ずっと変わらないのは団信と比較したときのメリットです。逆に、契約から10年間の間に死亡した場合は団信の方が経済的メリットが大きくなることがわかります。
団信に加入せずに住宅ローンを借りている人に万が一のことがあれば、住宅ローン残高は残ります(相続人が返済義務を引き継ぎます)。団信に加入しない場合は、生命保険の保険金で住宅ローン残高を返済できるように設計しておくことが必須です。
あくまでも筆者の感覚ですが、30歳前後で生命保険に加入する場合の保険料は安く抑えられるため、若い人であれば団信に加入せず定期死亡保険で代替するという方法も選択肢に入ってきます。
加入時年齢40歳の場合の例
ここでは「住宅ローン4,000万円・元利均等の25年返済で、住宅ローンの金利に換算して0.2%相当が保険料であること」を前提にシミュレーションしています。比較対象の生命保険は、加入時年齢40歳・65歳までの保障期間の「定期死亡保険」・受取保険金3,000万円・男性のケースです(保険料は試算当時のもの)。
| 団信 | 定期死亡保険 | |
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保険料の支払い総額(25年間支払った場合) |
約101万円 | 約300万円 |
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受取保険金(契約直後) |
約4,000万円 | 3,000万円 |
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受取保険金(10年後/50歳時点) |
約2,500万円 | 3,000万円 |
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受取保険金(20年後/60歳時点) |
約900万円 | 3,000万円 |
※団信の受取保険金は目安。実際は住宅ローンの返済スピードによって異なります。
先ほどの印象とはかなり違うと思います。一般的な生命保険は加入時の年齢が上がるとどうしても保険料が高くなるため、40歳前後では団信の割安さが際立ちます。
このように、30歳で契約するケースと35歳・40歳で契約するケースでは一般の生命保険の条件は悪化していきます。「35歳以下なら団信は損」と機械的に決めつけず、必ずご自身の年齢・借入額・健康状態でシミュレーションしてください。
借り換え時は「団信を選び直すチャンス」
すでに住宅ローンを返済中の方にとって重要なのは、借り換えは団信に入り直すタイミングでもあるということです。
- フラット35への借り換えでは、新機構団信(または新3大疾病付機構団信)に加入するか、団信なし(−0.2%)を選ぶかを改めて選択できます。
- 年齢を重ねてから民間の定期保険に入り直すと保険料が高くつくため、借り換え時点の年齢が上がっているほど「団信付き」の相対的な割安さが増します。
- 逆に、すでに十分な死亡保障を確保している人は、団信なし(−0.2%)で金利を下げ、借り換えの損益分岐を有利にする考え方もあります。
なお、団信に加入しない場合でも、死亡保険などでセーフティーネットを構築することは重要です。フラット35の新機構団信は死亡だけでなく所定の身体障害状態も保障します。障害状態になった場合には、より多くの資金が必要になることも否定できません。保障内容・金利の最新情報は住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。

