安心R住宅とは?中古住宅選びで使える制度の現状とチェック方法

安心R住宅とは?

“安心R住宅”とは、正式名称を”特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度”といい、中古住宅(既存住宅)市場の活性化を目的に、中古住宅の「不安」「汚い」「わからない」といった悪いイメージを払拭するために国土交通省が定めた制度です。簡単に言うと「国が定めた一定の要件を満たした中古住宅(既存住宅)」だけが使えるマーク・目印です。
2018年(平成30年)4月1日から“安心R住宅”制度がスタートし、すでに8年が経過しました。制度は現在も運用されており、国土交通省は2026年4月1日にガイドラインと制度Q&Aを一部改正、2026年5月29日には制度の概要と実施状況を更新しています(同省サイトの更新履歴で確認)。ただし、その存在感や認知度はいまひとつという状況が続いています。
かつては住宅エコポイント(次世代住宅ポイント)と安心R住宅を組み合わせる動きもありました(次世代住宅ポイント制度はすでに終了しています)。中古住宅の取得・リフォームを後押しする支援策は時期によって入れ替わるため、利用を検討する際は、その時点で実施されている国や自治体の最新の支援制度をあわせて確認するとよいでしょう。
「安心R住宅マークが付いている住宅は、国が定めた要件を満たした中古物件ですよ!」とすぐにわかるようにして、中古住宅を購入しやすくする制度というわけです。
安心R住宅の3つの要件と、「安心」「R」の意味
国土交通省のQ&Aによると、安心R住宅とは「耐震性があり、インスペクション(建物状況調査等)が行われた住宅であって、リフォーム等について情報提供が行われる既存住宅」を指し、具体的には次の3つを満たすものです。
- [1] 耐震性等の基礎的な品質を備えている
- [2] リフォームを実施済み、またはリフォーム提案が付いている
- [3] 点検記録等の保管状況について情報提供が行われる
また、「安心」とは、①新耐震基準等に適合すること、②インスペクションの結果、構造上の不具合および雨漏りが認められず、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合していることを意味すると明記されています。「R」は Reuse(再利用)・Reform(改装)・Renovation(改修)の3つの頭文字です。
マークを見分けるうえで大事なのが、「安心R住宅」の標章に登録団体の名称が併記されていない住宅は、安心R住宅ではないという点です。国土交通省も、広告に疑義がある場合は標章に併記された団体へ問い合わせること、仲介業者がその団体から標章の使用許諾を受けているかを団体のホームページで確認することを呼びかけています。
中古住宅の活性化は日本の課題
「2025年問題」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2025年問題とは、2025年に団塊の世代が75歳の後期高齢者になり、過去に例のない超高齢社会に突入することを示した言葉で、その2025年はすでに過ぎ、現実のものとなっています。詳しくは「2025年問題が住宅ローン金利に与える影響は?」でも紹介していますので参考にしてください。
いずれにせよ、少子高齢化・人口減少が進み、とっくに「世帯の数」よりも「住宅・家の数」の方が多いにもかかわらず、新築住宅が次々と建てられています。つまり、現在進行形で空き家が増え続けているわけです。
近くに空き家がある人は想像できると思いますが、空き家は雑草が生い茂り、悪臭を放ち、周辺の生活環境や景観の悪化につながります。不法侵入などによる治安の悪化にもつながるとされます。国土交通省や住宅金融支援機構にとって「中古住宅問題」は大きな課題の1つというわけです。
海外では中古住宅の活用が進む
「海外では普通だから」と「日本の文化を否定する」つもりはありませんが、日本は全住宅流通量(既存住宅の流通+新築着工)に占める既存住宅の割合が約14.5%にとどまります(2018年のデータ。総務省「平成30年住宅・土地統計調査」と国土交通省「住宅着工統計」にもとづく国土交通省の資料による)。

同じ資料の国際比較では、欧米の状況は大きく異なり、アメリカは約81.0%、イギリスは約85.9%、フランスは約69.8%が既存住宅です。日本は地震大国で「最新の耐震性を持つ住宅の方が安心して住める」といった特殊な事情もあるため一概に比較すべきではありませんが、数値の上では日本が中古住宅を十分に活かせていないことは明確です。
こうした問題を解決すべく、「品質の良い住宅を作り、メンテナンスして長く使う社会へ移行する」ための整備が国土交通省を中心に進められているわけです。
安心R住宅制度の背景
安心R住宅制度の背景には、「中古」には品質が悪い・古くて汚い・物件の情報が少なくてよくわからない、という悪いイメージがあり、新築物件に比べて流通しにくいという課題があります。前述のとおり「R」にはReuse・Reform・Renovationの3つの意味が込められており、マークは「耐震性・インスペクション・リフォーム・点検記録」といった要件を満たしている物件であることを示す目印になります。
安心R住宅は、どのくらい使われているのか
制度の広がりは、国土交通省が公表している「安心R住宅調査報告書」の提出件数で確認できます(登録事業者団体からの報告にもとづく集計)。

初年度の2018年度(平成30年度)は1,266件でしたが、2025年度(令和7年度)は2,213件まで増え、累計では13,155件に達しています。2020年度前後はいったん伸びが止まりましたが、その後は増加基調です。
とはいえ、日本の既存住宅の流通量は年間十数万戸規模です。年間2,000件強という水準は、中古住宅市場全体から見ればまだごく一部にとどまります。「安心R住宅マークが付いていないから品質が悪い」という話ではまったくない、という点は押さえておいてください。
なお、標章を付与できるのは国土交通大臣の登録を受けた事業者団体の会員企業で、登録事業者団体は現在12団体です(優良ストック住宅推進協議会、リノベーション協議会、全日本不動産協会、全国宅地建物取引業協会連合会、全国住宅産業協会など。最新の一覧は国土交通省のサイトで確認できます)。
安心R住宅でわかること・わからないこと
マークの意味を正しく理解しておくと、物件選びで過信も過小評価もせずに済みます。国土交通省のQ&Aをもとに整理すると次のとおりです。
| 確認できる項目 | マークが示していること | 注意点 |
|---|---|---|
| 耐震性 | 新耐震基準等に適合していること | 現行の建築基準関係法令等への適合を保証するものではない |
| 建物の状態 | インスペクションで構造上の不具合・雨漏りが認められず、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合 | 目視・計測による調査で、瑕疵がないことの保証ではない |
| リフォーム | 実施済み、またはリフォーム提案が付いている | どこまで直したかは物件ごとに違う。調査報告書で内容を確認する |
| 点検記録 | 点検記録等の保管状況について情報提供が行われる | 記録が「ある」ことと、内容が十分であることは別 |
| 審査の主体 | 登録団体の会員企業が、国の定めた要件に適合する旨を表示 | 国による個別審査を受けたものではない |
| 土地・地盤 | 対象外 | 地盤の不同沈下や地震後の液状化は保証されない。専門の調査会社等へ相談 |
とくに押さえておきたいのが最後の2つです。安心R住宅は「建物」についての情報提供の仕組みであり、土地の条件や立地の災害リスクまでカバーするものではありません。国土交通省自身も、地盤の不同沈下や地震後の液状化については保証しないと明記しています。
立地のリスクは、自治体が公表しているハザードマップで別途確認するのが基本です。その際は、ハザードマップには「前提となる想定(想定降雨量など)」があり、想定を超える現象では想定区域の外でも被害が起こり得ることを理解しておきましょう。河川の氾濫を対象としたものとは別に、雨水がはけきれずに市街地であふれる「内水(雨水出水)」のハザードマップを公開している自治体もあります。作成年と想定条件もあわせて確認してください。国土交通省のハザードマップポータルサイトから、各自治体の公表状況を探すことができます。
中古住宅を買った人が住宅ローンを借り換えるときは
中古住宅を購入して返済中の人が借り換えを検討する場合、新築の場合と少し違う視点が必要になります。
借り換えでは、新しい金融機関があらためて物件の担保価値を評価します。築年数の上限や、借入可能額に対する担保評価の考え方は金融機関ごとに異なるため、金利の低さだけで申込先を決めず、条件を各金融機関の公式サイトで確認してください。購入時に取得したインスペクションの結果や安心R住宅調査報告書、既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書などの書類は、建物の状態を説明する材料として手元にそろえておくと話が早くなります。
また、【フラット35】へ借り換える場合は、原則として住宅金融支援機構の技術基準に適合していることを示す「適合証明書」が必要です(「中古マンションらくらくフラット35」の登録物件など、一定の要件を満たす場合は物件検査を省略できる取扱いがあります)。適合証明の取得には検査費用と日数がかかるため、借り換えの損得を試算するときは、この費用も諸費用に含めて損益分岐を計算してください。詳しい取扱いは【フラット35】の公式サイトでご確認ください。
まとめ
2018年4月1日にスタートした安心R住宅。制度は現在も続き、国土交通省による見直しも重ねられていますが、年間の利用は2,000件規模で、世の中に浸透するにはまだ時間がかかりそうです。とはいえ、新築よりも安価で立地が良いことも多い中古物件を選ぶ際の1つの判断材料として、少しずつ活躍の場を広げています。
中古住宅の購入を検討している人は、この「お墨付きマーク」の有無に加えて、標章に登録団体名が併記されているか、安心R住宅調査報告書の中身、既存住宅売買瑕疵保険やインスペクションの有無まで確認しておくと、より納得して中古住宅を選べます。国土交通省の「これでわかる!安心R住宅調査報告書」も、売買契約前の確認に役立ちます。
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