がん保障付き団信の選び方|上乗せ金利の比較と借り換え活用

がん保障付きの団信は、返済中の住宅ローンでも借り換えのタイミングで入り直せます。上乗せ金利は「がんと診断された時点で残高が半分」なら年0.000%(無料)で付く銀行があり、「残高がゼロ」でも年0.050〜0.150%程度、フラット35の新3大疾病付機構団信で年0.240%というのが2026年9月時点の相場です。問題は保障の厚さと上乗せ分の総返済額増を、金利差・諸費用と一緒に損益分岐で見られるかどうか。ここでは主要行の上乗せ幅を並べたうえで、借り換えで団信を入れ替えるときの判断材料を整理します。
がんの疾患で半数の方が収入が半分以下に
2017年9月に、ネット生命保険最大手のライフネット生命保険がNPO法人キャンサーネットジャパンと協力して、全国のがん経験者の男女566人を対象に、日々の生活やお金、仕事に関する悩みなどの実態を調査した結果を発表しました。
※2020年にも同様の調査が実施され、結果が発表されていますが、2017年の調査が最も内容が充実しているため、当時のアンケート結果を継続して紹介しています。
がんにかかったとき、最も不安に感じるのは再発や転移で、アンケート回答者の82%ががんの進行や悪化に不安を感じていることがわかります。また、仕事や家族の負担、治療費、生活の制限、治療方法、収入減少などの悩みも続いています。
この調査で注目したいのは、がんになった時に収入がどのように変化するかという点です。なんと、がんになった人の47%もの方が「収入が半分以下になった」と回答しています。収入が減少することは予想できるものの、2人に1人の割合で収入が半分以下になってしまうという実態は、想像以上です。
しかも、収入がゼロになった方も18%に上り、約5人に1人が全く収入がなくなってしまうという厳しい現実が浮かび上がっています。
がんを患えば、当然、治療費がかかります。その上、収入が激減することで家計のバランスが大きく崩れてしまっていることが、この調査結果からも明らかです。
この調査では収入が減った人が、どのような点で経済的に困窮したのかも調査しています。その調査結果によると医療費や本人や家族の生活費を挙げた人が多く、次いで家賃や住宅ローンの支払いなど住居費を上げています。
日本人の2人に1人が生涯でがんと診断されるといわれ、医療の高度化や定期健診の普及によって「がん=死」ではなく治療しながら暮らす病気へと変わってきました。だからこそ、治療期間が長引くあいだの収入減をどう受け止めるかが課題になります(参考記事:がん5年生存率64.8%|疾病保障付き住宅ローンを借り換えで比較)。
住居費のうち家賃は、契約を解約したり安い物件へ引っ越したりして調整できます。一方で住宅ローンの返済額は簡単に下げられません。だからこそ、返済中の家計を守る手段として団信の保障内容が効いてきます。
がんを保障対象とする団信は大きく2種類あり、がんと診断確定された時点で住宅ローン残高がゼロ(または半分)になるタイプと、就業不能や長期入院が一定期間続いたときに残高がゼロになるタイプに分かれます。診断時点で効くかどうかが、実際の家計へのインパクトを大きく変えます。
がんと診断された時点で残高がゼロになる団信=上乗せは年0.050〜0.150%
ソニー銀行のがん団信100は上乗せ年0.100%+診断給付金100万円
ソニー銀行の「がん団信100」は、年0.100%の上乗せで、がんと診断確定されたときに住宅ローン残高が100%保障されます。さらにがん診断給付金100万円が本人に直接支払われるほか、がん先進医療給付(通算2,000万円・一時金30万円)、一般のがん保険では対象外になりやすい上皮内がん・皮膚がんにも50万円の給付が付きます(2026年9月時点・ソニー銀行 公式「団体信用生命保険(団信)」)。
保険金は銀行に支払われて残高の返済に充てられますが、給付金は本人に支払われるため使いみちが自由で、治療費にも収入が減った期間の生活費にも回せます。がん診断時に残高が半分になる「がん50%保障特約付き団信」は上乗せなしで付帯できます。なお、ソニー銀行の住宅ローンは年収400万円以上が申込条件です。
auじぶん銀行は「がん100%」が年0.050%、「がん50%」は上乗せ0円
auじぶん銀行の「がん100%保障団信」は、2023年7月の団信リニューアルで上乗せ幅が年0.050%まで下がりました。さらに保障を厚くした「がん100%保障団信プレミアム」は年0.150%です(2026年9月時点・auじぶん銀行 公式「団体信用生命保険」)。
注目したいのは、上乗せ0円で付く「がん50%保障団信」の中身です。がん診断時の残高50%保障に加えて、急性心筋梗塞・脳卒中・肝疾患・腎疾患の4疾病でも50%保障、すべてのケガ・病気で入院が180日以上続いたときの全疾病長期入院保障(残高100%)、入院中の毎月の返済が0円になる月次返済保障までが無料で付帯します。コストをかけずに保障の土台を作りたい借り換え層とは相性がよい設計です。ただし、がん保障付きの団信は加入時年齢の上限(満50歳未満など)が設けられている点に注意してください。
フラット35は新3大疾病付機構団信で年0.240%=要介護2以上まで保障
フラット35取り扱いシェア1位のSBIアルヒ
SBIアルヒはフラット35の実行件数シェア16年連続No.1(2025年度27.7%/2026年5月公表)です。
※2010年度-2025年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】実行件数(2026年3月末現在、SBIアルヒ調べ)
フラット35では、標準の「新機構団信」に3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)の保障を足した「新3大疾病付機構団信」を年0.240%の上乗せで選べます。この団信の特徴は、3大疾病だけでなく公的介護保険制度の要介護2〜5に該当した場合まで保障対象になること。民間銀行の3大疾病特約にはない範囲まで含むため、上乗せ幅だけで割高と判断しないほうがよいタイプです。
一方で、過去にがんと診断された方は加入できないほか、夫婦連生の「デュエット(ペア連生団信)」とは併用できないなどの条件があります。健康上の理由などで団信に加入しない場合は、借入金利が新機構団信付きの金利から年0.200%引き下げられます(【フラット35】団体信用生命保険の取扱条件/住宅金融支援機構【フラット35】公式・2026年9月時点)。
がん保障の上乗せ金利を横並びで比べる
同じ「がん保障付き」でも、診断時に残高がいくら減るのかとがん以外の疾病まで届くのかで必要な上乗せ幅は変わります。2026年9月時点で各行が公表している上乗せ幅を整理すると、次のようになります。
| 金融機関・団信 | 上乗せ金利 | 保障の要点 |
|---|---|---|
| auじぶん銀行 がん50%保障団信 | 年0.000%(0円) | がん診断で残高50%。4疾病50%・全疾病長期入院(100%)・月次返済保障も無料付帯 |
| SBI新生銀行 全疾病保障付団信 | 年0.000%(0円) | 8大疾病を含む就業不能状態で残高を全額返済(2026年3月2日取扱開始) |
| auじぶん銀行 がん100%保障団信 | 年0.050% | がん診断で残高100%。加入時年齢の上限あり |
| ソニー銀行 がん団信100 | 年0.100% | がん診断で残高100%+診断給付金100万円・先進医療 通算2,000万円 |
| SBI新生銀行 ガン団信 | 年0.100% | がん診断で残高0円。借入時点で満50歳未満が対象 |
| PayPay銀行 がん100%保障団信 | 年0.150% | がん診断で残高100%(がん50%保障は年0.100%) |
| フラット35 新3大疾病付機構団信 | 年0.240% | 3大疾病に加え要介護2〜5まで保障。過去のがん罹患歴があると加入不可 |

数字だけを見ると上乗せ0円の保障がもっとも有利に見えますが、「残高が半分になる」保障と「残高がゼロになる」保障では、残された家計の負担がまったく違います。残債3,000万円で診断された場合、50%保障なら1,500万円の返済が続くのに対し、100%保障ならその時点で返済義務がなくなります。上乗せ0.050〜0.100%で埋められる差なのかを、自分の残債と残期間に当てはめて考えるのが実務的です。
借り換えは「団信(がん保障)」を入れ替えられる数少ない機会
いま返済中の住宅ローンにがん保障が付いていない、あるいは保障が手薄だと感じる場合、借り換えは団信に入り直せる数少ない機会です。借り換え時は新しい住宅ローンの団信に加入し直すため、現在の商品にがん保障が無くても、がん保障付きの住宅ローンへ切り替えることで保障を得られる可能性があります。ただし団信の加入には健康状態の告知と保険会社の審査が必要で、既往歴があると加入できないこともある点は押さえておきましょう。
判断の基本は総返済額での比較です。がん保障の上乗せ金利は総返済額を押し上げるため、借り換えによる金利差の削減効果から、諸費用(事務手数料・登記費用・印紙税など)と上乗せ分を差し引いて損益分岐を見ます。金利差だけを見て「得」と判断し、団信の上乗せを計算に入れていないと、実際の削減額は想定より小さくなります。
順序としては、①いまの適用金利と残債・残期間を返済予定表で確認する →②借り換え候補の金利と諸費用を出す →③付けたい団信の上乗せ幅を金利に足して総返済額を再計算する、の3ステップが分かりやすいでしょう。②③をまとめて眺めるなら住宅ローン借り換えで医療保険の代わりに?疾病保障付き団信の選び方もあわせて確認すると、医療保険との役割分担まで整理できます。
また、団信は「万一のときに家を残せるか」に直結する一方、治療費そのものを給付するものではありません。医療保険・がん保険と重複していないか、逆に空白がないかも同時に見直すと、保険料全体では下げられることもあります。世帯の稼ぎ手が1人の場合の備え方は夫が病気で住宅ローンが払えない?疾病保障付き団信と借り換えの備えで具体的に整理しています。
諸費用の分かりやすさもあわせて重視するなら、保証料0円・一部繰上返済手数料0円で、一般団信と全疾病保障付団信(2026年3月2日取扱開始)を上乗せ0円で選べるSBI新生銀行も、借り換え先の選択肢の一つになります。がん診断時に残高0円となるガン団信は年0.100%の上乗せで、借入時点で満50歳未満の方が対象です(SBI新生銀行 公式「団体信用生命保険(団信)のご紹介」)。なお、介護保障を付けた「安心保障付団信」は新規の取り扱いを終了しています。
まとめ|「診断時にいくら減るか」で選び、上乗せ分は損益分岐に入れる
がん保障付きの団信は、上乗せ0円で残高50%保障を得るか、年0.050〜0.150%を払って残高100%保障にするか、年0.240%で3大疾病+要介護まで広げるか、という選択になります。先に決めるのは「診断された時点で残高がいくら減っていてほしいか」で、上乗せ幅の比較はその後です。
そして借り換えで団信を入れ替えるなら、上乗せ分を金利に足したうえで諸費用まで含めた総返済額で比べること。ここを飛ばすと、保障は厚くなったのに家計は改善していない、という結果になりかねません。
Q. 住宅ローンの借り換えで、あとからがん保障を付けられますか?
A. 付けられる可能性があります。借り換えでは新しい住宅ローンの団信に加入し直すため、いまの商品にがん保障が無くても選び直せます。ただし健康状態の告知と保険会社の審査が必要で、必ず加入できるとは限りません。
Q. がん保障の上乗せ金利は、借り換えの損得にどのくらい影響しますか?
A. 残高100%保障の上乗せは年0.050〜0.150%程度が目安で、その分だけ総返済額が増えます。損益分岐を計算するときは、借り換え後の金利にこの上乗せ幅を足した数値で試算してください。コストを抑えるなら上乗せ0円の「がん50%保障」を選ぶ方法もあります。
Q. がん保障付きの団信に年齢制限はありますか?
A. あります。がん保障付きの団信は「借入時点で満50歳未満」など加入時年齢の上限を設けている金融機関が多く、一般団信より条件が厳しくなっています。借り換えを検討する年代では対象外になることもあるため、申し込み前に対象年齢を確認してください。
Q. がんの既往歴があると団信に入れませんか?
A. 通常の一般団信は難しい場合がありますが、引受基準を緩和した「ワイド団信」を用意する金融機関もあります(金利上乗せが必要なことが多い)。なお、フラット35の新3大疾病付機構団信は過去にがんと診断された方は加入できません。加入可否は保険会社の審査によるため、複数の金融機関で確認してみましょう。
Q. フラット35で団信に加入しない選択はできますか?
A. できます。健康上の理由などで新機構団信に加入しない場合でもフラット35(買取型)は利用でき、そのときの借入金利は新機構団信付きの金利から年0.200%引き下げられます。ただし万一の際に残高は残るため、他の生命保険で代替できるかを必ず確認してください。
※本記事の上乗せ金利・保障内容は2026年9月時点で各金融機関の公式サイトを確認したものです。最新の取り扱い状況・加入条件は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
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