住宅ローン借り換えは残高1000万円以下でも得?諸費用込みで試算

住宅ローンの借り換えは、昔から「残高1,000万円以上・残り返済期間10年以上・金利差1%以上」が目安といわれてきました。では、残高が1,000万円を下回ったら借り換える意味はないのでしょうか。
結論から言うと、残高の大小そのものより、「いま何%で借りているか」と「諸費用をいくら払うか」で決まります。しかも2026年は変動金利が上昇局面にあり、数年前まで正解だった「とりあえず借り換え」が通用しなくなっています。この記事では、残高900万円・残り10年という小さめのケースで、2026年8月時点の実際の金利と諸費用を使って損得を計算します。
試算の前提:残高900万円・残り10年
返済が進んで残高が1,000万円を切った人を想定します。借り換え先の金利は、当編集部が毎月、各行の公式金利ページを確認して集計している実測値(2026年8月分)を使います。
| 項目 | 条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 住宅ローン残高 | 900万円 | 1,000万円を下回ったケース |
| 残りの返済期間 | 10年(120回) | 期間は延ばさず借り換える前提 |
| 返済方法 | 元利均等返済・ボーナス返済なし | 繰上返済はしないものとする |
| 比較する現行金利 | 年2.500% と 年1.000% | 高い金利で借りた人/低金利期に借りた人 |
年2.500%は、かつての全期間固定型や、当初固定期間が終わって金利が上がったケースを想定しています。年1.000%は、変動金利が底だった時期に借りて、その後の引き上げを受けた水準のイメージです。
まず押さえるべきは「諸費用」の中身
借り換えの損得は、下がる利息の合計から諸費用を差し引いて判断します。残高が小さいほど下がる利息も小さくなるので、諸費用の差がそのまま結果を左右します。
事務手数料には「定額型」と「定率型」がある
金融機関に支払う融資事務手数料には、金額が一定の定額型と、借入金額に率を掛ける定率型があります。残高が小さい借り換えでは、この違いが逆転することがあります。
| 金融機関 | 融資事務手数料(税込) | 900万円を借りた場合 |
|---|---|---|
| 楽天銀行(金利選択型) | 330,000円(定額型) | 330,000円 |
| イオン銀行 | 定額型110,000円/定率型2.20%(最低220,000円) | 220,000円(定率型・最低額を適用) |
| ソニー銀行 | 住宅ローンは44,000円/変動セレクト・固定セレクトは2.20% | 198,000円(変動セレクトの場合) |
定額型は借入額が大きいほど有利、定率型は借入額が小さいほど有利という関係にあります。ただしイオン銀行のように「定額型を選ぶと借入利率が年0.200%高くなる」条件が付く場合もあり、単純に安いほうを選べばよいわけではありません。手数料の安さと金利の低さはセットで見るのが鉄則です。
事務手数料以外に10万〜15万円程度かかる
借り換えでは、いまの抵当権を抹消して新しい抵当権を設定します。そのため事務手数料とは別に、次の費用がかかります。
- 抵当権設定の登録免許税:借入金額×0.4%(900万円なら36,000円)
- 抵当権抹消の登録免許税:不動産1件につき1,000円
- 司法書士報酬:7万〜10万円程度が目安
- 印紙税:契約金額に応じて。電子契約なら不要になる金融機関が多い
以下の試算では、これらを合計して12万円として計算します(実額は物件や司法書士によって変わります)。
実際に計算してみる(2026年8月時点の金利)
借り換え先の変動金利は、当編集部が2026年8月に各行の公式金利ページを確認した実測値です。楽天銀行 年1.267%/イオン銀行 年1.130%/ソニー銀行(変動セレクト)年1.347%で計算します。
| 借り換え先 | 適用金利 | 毎月返済額 | 10年間の返済総額 | 諸費用(手数料+12万円) |
|---|---|---|---|---|
| 現行のまま | 年2.500% | 84,843円 | 10,181,149円 | — |
| イオン銀行 | 年1.130% | 79,353円 | 9,522,307円 | 340,000円 |
| ソニー銀行(変動セレクト) | 年1.347% | 80,207円 | 9,624,797円 | 318,000円 |
| 楽天銀行(金利選択型) | 年1.267% | 79,891円 | 9,586,931円 | 450,000円 |

諸費用まで含めた10年間の支払総額で比べると、現行が年2.500%なら、いずれの金融機関に借り換えても支払総額は減ります。
| 借り換え先 | 支払総額(諸費用込み) | 現行年2.500%との差 |
|---|---|---|
| イオン銀行 | 約986万円 | 約32万円の削減 |
| ソニー銀行(変動セレクト) | 約994万円 | 約24万円の削減 |
| 楽天銀行(金利選択型) | 約1,004万円 | 約14万円の削減 |
残高900万円・残り10年という「目安を下回る条件」でも、諸費用を払ったうえで十数万〜30万円ほど残るという結果です。「残高1,000万円以下だから無理」と決めつける必要はありません。
ただし、いま低い金利で借りている人は逆
同じ条件で、現行金利が年1.000%だった場合を計算すると、結果は反転します。
| 借り換え先 | 現行年1.000%との差 | 判定 |
|---|---|---|
| イオン銀行 | 約40万円の増加 | 借り換えない方がよい |
| ソニー銀行(変動セレクト) | 約48万円の増加 | 借り換えない方がよい |
| 楽天銀行(金利選択型) | 約58万円の増加 | 借り換えない方がよい |
理由は単純で、借り換え先の金利のほうが高いからです。日本銀行の政策金利は2026年7月30日・31日の会合でも「1.0%程度」で据え置かれましたが、ここ数年の利上げを受けて各行の変動金利は上昇しており、かつてのような0.4%台の水準は姿を消しています。低金利期に借りた人にとって、いまの借り換えは「金利を上げに行く」行為になりかねません。
借り換えを検討するときは、まず「自分の適用金利」を返済予定表で確認してください。ここが1%前後であれば、少なくとも金利を下げる目的での借り換えは成立しません。
損益分岐の考え方を1行にすると
難しい計算をしなくても、次の考え方でおおよその判断はできます。
「残高 × 金利差 × 残り年数のおよそ半分」が、ざっくり見た利息の削減額です。残高900万円・金利差1.370%(2.500%→1.130%)・残り10年なら、900万円×1.370%×10年×0.5=約62万円。ここから諸費用34万円を引くと約28万円となり、実際の試算値(約32万円)と近い水準になります。
この式で出た概算が諸費用(事務手数料+12万円程度)を明確に上回らないなら、借り換えは見送りと考えて差し支えありません。残り期間が短いほど削減額は小さくなるため、残り5年を切ると、よほどの金利差がなければ諸費用を回収できません。

金利以外に「保障」も比べる
借り換えは団体信用生命保険(団信)に入り直す手続きでもあります。費用負担なしで疾病保障が付く金融機関を選べば、金利差だけでは見えない価値が加わります。
| 金融機関 | 疾病保障の付帯 | 契約者負担 |
|---|---|---|
| 楽天銀行(金利選択型) | 50%保障がん団信(全疾病特約付)=がんと診断されたら残高の50%、就業不能状態が1年をこえて継続したら残高0円 | なし(満50歳以下が対象) |
| イオン銀行 | がん保障・全疾病保障などのプランを用意(内容・上乗せの有無はプランにより異なる) | プランによる |
| ソニー銀行 | がん50%保障特約(内容・条件は公式サイトで確認) | プランによる |
注意したいのは、手厚い無料保障の多くに「満50歳以下」といった年齢条件が付く点です。借り換えは新規借入より年齢が上がってから検討するため、先延ばしにするほど選べる保障が減っていきます。
金利上乗せ0円で保障を厚くしたい場合は、SBI新生銀行の全疾病保障付団信も選択肢になります。病気・ケガの種別を問わず(精神障害等を除く)所定の就業不能状態が続く間は毎月の返済額が保障され、所定の期間を超えると残高が0円になる仕組みが、金利上乗せなしで付きます。事務手数料は借入金額の2.20%(税込)の定率型なので、残高が小さい借り換えほど手数料の絶対額は小さくなります。加入年齢など条件があるため、詳細は公式サイトでご確認ください。
よくある質問(FAQ)
残高1,000万円以下でも借り換えのメリットはありますか?
あります。上の試算では、残高900万円・残り10年でも、現行が年2.500%なら諸費用込みで14万〜32万円の削減になりました。ただし「残高が小さいから常にメリットがある/ない」ではなく、金利差と残り期間と諸費用で決まります。
いまは金利が上がっているのに、借り換える意味はありますか?
高い金利で借りている人には意味があります。全期間固定型や、当初固定期間が終わって金利が上がった人は、いまの変動金利のほうが低いことがあります。逆に変動金利が最も低かった時期に借りた人は、借り換えると金利が上がる可能性が高いので、まず返済予定表で自分の適用金利を確認してください。
借り換えの諸費用には何が含まれますか?
融資事務手数料、抵当権設定の登録免許税(借入金額×0.4%)、抵当権抹消の登録免許税(不動産1件1,000円)、司法書士報酬(7万〜10万円程度)、印紙税などです。電子契約に対応していれば印紙税は不要になります。実額は金融機関・物件によって変わるため、必ず見積もりを取ってください。
返済期間を延ばして毎月の返済額を下げるのはどうですか?
毎月の負担は下がりますが、利息を払う期間が延びるため総返済額は増えます。家計を立て直す目的なら選択肢になりますが、「総返済額を減らす」目的とは別物です。また、団信の保障は完済時年齢の上限(満80歳未満など)があるため、期間を延ばすと保障の切れ方も変わります。
諸費用も借り入れに含められますか?
諸費用を含めて借り入れできる金融機関があります。ただし借入額が増えれば利息も増えるため、手元資金で払えるなら払ったほうが総額は抑えられます。取扱いの有無は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
まとめ
「残高1,000万円以上・残り10年以上・金利差1%以上」はあくまで目安であり、絶対条件ではありません。残高900万円でも、現行金利が高ければ諸費用を払ったうえで数十万円の削減が残ります。
一方で、2026年の金利環境では低金利期に借りた人が借り換えると総返済額が増えるという結果も出ました。まず返済予定表で自分の適用金利と残り期間を確認し、「残高 × 金利差 × 残り年数 ÷ 2」と諸費用を比べる。この一手間だけで、借り換えるべきかどうかの見当はつきます。
※本記事の試算は元利均等返済・ボーナス返済なし・繰上返済なしで計算した当編集部の試算例です。実際の返済額は金融機関の計算方法により数円〜数十円異なる場合があります。金利・手数料は改定されるため、最新の条件は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。
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