住宅ローンの借り換えと住宅ローン控除|控除を続ける要件と残高調整の計算

住宅ローンを借り入れたり借り換えたりした人にとって、毎年の年末調整・確定申告で気になるのが「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」です。1年目は確定申告が必要で、2年目以降は会社員なら年末調整で手続きできます(年末調整できなかった場合は確定申告で対応できます)。
住宅ローンの借り換えを行った人も、住宅ローン控除の手続き自体はこれまでと変わらず、年末調整・確定申告で行います。ただし、借り換えの場合は控除を受け続けるための要件や、年末残高の調整計算に注意が必要です。この記事では、借り換えを検討している人の視点で、そのポイントを整理します。

住宅ローン控除とは
住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは、マイホームの取得などを目的とした住宅ローンの年末残高の一定割合が、所得税(控除しきれない分は一部翌年の住民税)から控除される制度です。住宅購入者の税負担を軽くすることで、住宅取得を後押しすることを狙いとしています。基本的にはマイホーム購入時に利用した住宅ローンから借り換えても、引き続き利用できますが、いくつか気をつけたいポイントがあるので紹介します。
なお、住宅ローン控除は2022年(令和4年)の税制改正で大きく見直され、控除率が年末残高の「1%」から「0.7%」に引き下げられました。控除期間は住宅の種類や居住を開始した年によって異なり、新築住宅・買取再販住宅は原則13年間、中古(既存)住宅は原則10年間が基本です。
その後、令和8年度(2026年度)の税制改正で制度が延長・拡充され、関連税制法は2026年(令和8年)3月31日に国会で成立しています(国土交通省の報道発表資料にその旨が追記されています)。おもな内容は次のとおりです。
- 適用期限を5年間延長し、2026年(令和8年)1月1日~2030年(令和12年)12月31日に入居した場合まで利用できる。
- 省エネ性能の高い既存住宅について借入限度額を引き上げ、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置を設けたうえで、控除期間を13年間に拡充する。
- 床面積要件を40㎡以上に緩和する措置を既存住宅にも適用する(ただし合計所得金額1,000万円超の人、子育て世帯等への上乗せ措置を使う人は50㎡以上)。
- 2028年(令和10年)以降に建築確認を受ける省エネ基準適合住宅は適用対象外(登記簿上の建築日付が令和10年6月30日までのものは対象)。
- 2028年(令和10年)以降に入居する場合、土砂災害特別警戒区域などいわゆる災害レッドゾーンの新築住宅は適用対象外(建替え・既存住宅・リフォームは対象)。
このように、控除率・借入限度額・控除期間は「いつ・どんな住宅に入居したか」で細かく変わります。すでに返済中の人は、自分が入居した年のルールがそのまま適用されると考えてよく、借り換えによって適用されるルールが新しいものに切り替わるわけではありません。ご自身のケースは必ず国税庁や国土交通省の最新情報でご確認ください。
(参考)国税庁ホームページより
借り換えと住宅ローン控除については、国税庁のホームページに住宅ローンの借り換えに関する説明があります。ところが、内容を正確に意識して読まないと、住宅ローンを借り換えると控除が受けられなくなるように読めてしまいます。
住宅の取得等に当たって借り入れた住宅ローン等を金利の低い住宅ローン等に借り換えることがあります。
住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等は、住宅の新築、取得または増改築等のために直接必要な借入金または債務でなければなりません。したがって、住宅ローン等の借換えによる新しい住宅ローン等は、従前の住宅ローンを消滅させるための新たな借入金であり原則として住宅借入金等特別控除の対象とはなりません。
このような場合であっても、一定の要件の下、借り換え後の借入金について引き続き住宅借入金等特別控除を受けられます。
一定の要件とは次のすべての要件を満たす場合です。
(1) 新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること。
(2) 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること。
この取扱いは、例えば、住宅の取得等の際に償還期間が10年未満の借入金(いわゆるつなぎ融資)を受け、その後に償還期間が10年以上となる住宅ローン等に借り換えた場合も同じです。
なお、住宅借入金等特別控除を受けることができる年数は、居住の用に供した年から一定期間であり、住宅ローン等の借換えによって延長されることはありません。
国税庁
まず最初に「住宅ローン等の借換えによる新しい住宅ローン等は、・・・住宅借入金等特別控除の対象とはなりません。」と、基本的に対象外になると書かれています。
そのうえで「一定の要件の下、借り換え後の借入金について引き続き住宅借入金等特別控除を受けられる」とされています。こう書かれると、借り換えると控除が受けられなくなると勘違いしがちですが、「一定の要件」は通常の借り換えであれば問題なく満たせるので、借り換えを行っても引き続き控除の対象になります。
その一定の要件を念のため確認しておきましょう。
国税庁の読みにくい文章をわかりやすく言い換えると、「①借り換え後の住宅ローンが、マイホーム購入時に利用した住宅ローンの返済のためのものであることが明らかであること」「②借り換え後の住宅ローンの返済期間が10年以上あること」という条件を満たせばよいだけです。普通の住宅ローンの借り換えであれば、この条件を満たすのは簡単です。
ただし、1つ注意したいことがあります。住宅ローン控除は、マイホームを取得した人の所得税・住民税の負担を軽くする仕組みで、前述のとおり年末残高の0.7%(2022年以降の入居)が、居住開始年・住宅性能に応じた期間(おおむね10年または13年)にわたり控除されます。控除額や期間の具体的な数字は、いつ・どんな住宅に入居したかによって異なります。
借り換え時にチェックしたい5つのポイント
借り換えを実行する前に、控除を受け続けられるかどうかを次の5点で確認しておくと安心です。
| 確認する項目 | 見るポイント | 備考 |
|---|---|---|
| 返済期間 | 借り換え後の返済期間が10年以上あるか | 10年未満にすると控除の対象外になる |
| 借り換えの目的 | 当初の住宅ローンの返済のための借り換えであることが明らかか | 通常の借り換えなら問題なく満たせる |
| 控除が使える期間 | 当初の居住開始年から数えた期間(おおむね10年または13年) | 借り換えで延長されることはない |
| 借入額 | 借り換え後の当初借入額が、借り換え直前の残高を上回っていないか | 上回る場合は年末残高の調整計算が必要 |
| 手続きの書類 | 新しい金融機関が発行する年末残高証明書 | 発行時期・様式は金融機関によって異なる |
住宅ローンの借り換え時に気を付けたいこと
注意したいのが「住宅ローンの借入期間」です。住宅ローン控除には「住宅ローンの返済期間が10年以上であること」という条件があります。控除を受けられる期間がまだ残っているときに、10年未満の返済期間で借り換えてしまうと、借り換え後の住宅ローンが対象外になり、控除を受けられなくなってしまいます。
借り換えは、金利を下げると同時に返済期間を短くして総返済額を圧縮する使い方もできます。ただし、控除期間がまだ残っている状態で返済期間を9年などに短縮すると、短縮による利息の節約と引き換えに、残りの控除をすべて失うことになります。期間短縮を検討する場合は、残っている控除額と比べてから判断してください。
また、住宅ローン控除の対象期間は、当初の居住開始から数えた一定期間(おおむね10年または13年)であり、その期間が経過していない状態で「10年未満」の返済期間で借り換えると控除の対象外になる、という点は理解しておきましょう。
ちなみに、借り換えで新たな住宅ローンを契約しても、この控除期間そのものは延長されません。あくまでも当初の居住開始から数えた期間が、制度を利用できる期間です。
住宅ローンの借り換えで住宅ローン残高が増えた場合どうなる?
借り換え時に、事務手数料などの諸費用も含めて借り換えると、住宅ローン残高が増加することがあります。国税庁は、借り換え後の年末残高の扱いを次のように整理しています。
A=借り換え直前における当初の住宅ローン等の残高、B=借り換えによる新たな住宅ローン等の借入金額(当初金額)、C=借り換えによる新たな住宅ローン等の年末残高とすると、
- A≧B の場合(借入額が増えていない)……対象額=C(年末残高がそのまま控除の対象)
- A<B の場合(借入額が増えた)……対象額=C×A÷B(増えた分が対象から除かれる)
つまり、諸費用を自己資金で支払い、借入額を増やさずに借り換えたのであれば、面倒な調整計算は不要です。調整が必要になるのは、諸費用などを上乗せして借入額が増えたケースだけです。
言い換えると、計算式は次のようになります。
借り換え後の住宅ローンの年末残高 × (借り換え前の住宅ローンの借り換え直前の残高 ÷ 借り換え後の住宅ローンの当初の残高)
少しわかりにくいので、具体的に計算してみましょう。
(ケーススタディ)
住宅ローン残高が2,000万円のときに借り換えを行った。借り換えのための費用が50万円で、その諸費用を住宅ローンに上乗せして借り換えたため、借り換え後の住宅ローンの当初残高は2,050万円だった。その後、その年の年末まで返済を続け、年末残高は1,980万円だった。
この場合、住宅ローン控除の計算に使う年末残高は次のように調整されます。
1,980万円 × (2,000万円 ÷ 2,050万円) = 約1,931万円

実際の年末残高(1,980万円)と比べると約49万円少なくなっています。借り換えで増えた分(諸費用の上乗せ分)は、住宅ローン控除の計算対象外になるよう調整されているわけです。控除率0.7%で計算すると、この年の控除額の差は約3,400円にとどまります。「諸費用を上乗せすると控除が大きく減る」と身構える必要はありませんが、控除期間が長く残っているほど積み上がるため、諸費用を現金で払うか上乗せするかを決める材料の一つにはなります。
金利差のメリットと控除の減少は、あわせて考える
借り換えの損得は、「利息がいくら減るか」から「諸費用がいくらかかるか」を引いて判断するのが基本です。控除期間が残っている人は、これに控除額の変化を加えて考えます。
ポイントは次の2つです。
- 借り換えで金利が下がると、残高の減りが速くなり、結果として控除額もわずかに減る(控除は年末残高に対して計算されるため)。ただし減るのは控除額であって、手取りベースでは通常、利息の節約額のほうが大きくなります。
- 諸費用を上乗せすると、上乗せ分は控除の対象から外れる(前述の調整計算)。ただし上の例のように、金額としては年数千円程度にとどまることが多くなります。
結論として、控除があるから借り換えを見送る、という判断にはなりにくいのが実際のところです。控除は判断を左右する主役ではなく、金利差と諸費用の損益分岐に、控除の減少分を上乗せして確かめるという順番で考えるとわかりやすくなります。
借り換え先を選ぶときは、金利の低さだけでなく事務手数料・保証料・団信の上乗せ金利まで含めた総額で比べてください。たとえばSBI新生銀行は、保証料が原則0円、一部繰上返済手数料が0円、一般団信の上乗せ金利も0円で、事務手数料は借入金額×2.20%(税込)という分かりやすい設計になっています(2026年8月時点・公式サイトにて確認)。諸費用の内訳がシンプルだと借り換え後の残高を見積もりやすく、控除の調整計算まで含めた試算がしやすくなります。店舗での相談とオンライン手続きの両方に対応している点も、書類の準備が多い借り換えでは心強いところです。最新の金利・諸費用は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
借り換えと住宅ローン控除に関するよくある質問(FAQ)
Q. 借り換えると住宅ローン控除は受けられなくなりますか?
A. いいえ。前述の①②の要件(当初ローンの返済のためで、返済期間10年以上)を満たせば、借り換え後も引き続き控除を受けられます。通常の借り換えなら問題なく要件を満たせます。
Q. 借り換えで控除期間は延びますか?
A. 延びません。控除期間は当初の居住開始年から数えた一定期間(おおむね10年または13年)で固定されており、借り換えても延長されません。
Q. 借り換えと同時に返済期間を短くしても大丈夫ですか?
A. 借り換え後の返済期間が10年以上残るかどうかが分かれ目です。10年未満に短縮すると、その借り換え後のローンは控除の対象から外れます。控除期間がまだ残っている場合は、期間短縮で減る利息と、失う控除額を比べてから決めてください。
Q. 諸費用を自己資金で払えば、調整計算はしなくてよいのですか?
A. 借り換え後の当初借入額が借り換え直前の残高以下(A≧B)であれば、年末残高がそのまま控除の対象になり、調整計算は不要です。上乗せして借入額が増えた場合(A<B)のみ、C×A÷B の調整が必要になります。
Q. 借り換えると年末調整・確定申告の書類は変わりますか?
A. 借り換え後は、新しい金融機関が発行する「住宅ローンの年末残高証明書」を使って手続きします。残高が増えた場合は上記の調整計算が必要になるため、計算明細書の記入に注意しましょう。借り換えたこと自体を理由に、改めて1年目のような確定申告が必要になるわけではありませんが、記入方法の詳細は国税庁の案内を確認してください。
Q. 借り換えたローンを、さらにもう一度借り換えても控除は続きますか?
A. 再度の借り換えについても、国税庁は質疑応答事例で取り扱いを示しています。要件の考え方は同じですが、当初の住宅ローンとのつながりが確認できることが前提になります。個別のケースは税務署または国税庁の質疑応答事例でご確認ください。
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